住職に聞く!アースキャラバン篇 (5)

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。

喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。 http://endo-ryokyu.com/blog/

 

第五回

 

--「私たちが立ち向かっていくべきものは、人間の根源にある不安恐怖です」と住職はおっしゃっていました。

住職:はい

--心の根源にあるこの不安恐怖を突かれると、人は人でなくなる。とにかくこれは、ほんとうに人類のテーマだという気がします。自分や自分の家族の身の保全第一というのは、肯定されるべきものとして私たちは生きているのですから、、。

住職:まあそうですね。

--不完全などうしようもない自分、だからこそ少しでも世界のために何かを引き受けなくてはならない、前回の住職のお話からそう感じました。

住職:そうですか!

--ところで、アースキャラバンによって、はじめて中東に原爆の火がもたらされるそうですが、そうなったら、ほんとうに戦争のない世界の実現へ向けて大きな一歩になりますね。この一歩は、とてつもなく大きいと感じます。

住職:運べるかどうかは、まだクリアーしなければならないこともあるのですが、それでもこれを担当して下さっている実行委員の皆さんの力で一歩一歩実現に向けて進んでいます。

--アースキャラバンは、一つのイベントという枠では捉えきれないものがあるのではないでしょうか?

住職:面白そうなことを思いついたら、何でもやってしまおうとしていますからね。

--実は私が、最も興味があるのは、「異宗教合同ソング」ですが、これは、なぜ作ろうと思われたのですか?

住職:6年前に、ベツレヘム近郊での中東平和教育会議に参加して、氣のワークショップをやったんです。これは、自分がやるワークショップの時間以外は、他の人の講義に参加するというものでした。

--へぇー

住職:僕はその時、アメリカの大学教授の「中東の宗教対立はどのように生まれたか?」という講義に出たんです。
その講義で学んだことは、「歴史的にはユダヤ教徒とイスラム教徒は、礼拝施設を共有していた。そして別々に礼拝時間を決めていた。両者はお互いを尊重しながら、ご近所同士として仲良くやっていた。
それがイスラエル建国後には、イスラム教徒を立ち入り禁止するなどで、両者の対立を煽るような処置をとり、人為的に対立構造が造り出されていった」ということでした。

--ああ、そうだったんですか!

住職:その講義は強く印象に残ったし、その後、パレスチナを旅している内に、こりゃ歴史もウソを書いているし、世界に配信されているメディアもウソばかりついているなと、はっきりと身をもって思い知ったんです。

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<東エルサレムの路上でのボランティア指圧。パレスチナ人の家族は、イスラエル警察に不当に家を追い出され、路頭に迷っていく>

 


<人権活動家として活動する女性ラビ(ユダヤ教指導者)のエマとエルサレム郊外で。両端は、一緒に活動したタオサンガ・メンバー>
※ローレンス(左)とオリバー(右)

 

 

住職:中東問題を、「大昔からある宗教対立の延長だ」というような捉え方をする人がよくいますよね。

--はい。私もそう思っていました。

住職:でも、パレスチナの問題は、メディアがまことしやかに伝えるような宗教対立ではなかったんです。これは土地を奪われ、自由を奪われ、生存権を奪われた人間の自然の反応であり、人権を奪ったことによる当然の帰結なのです。

--日本が朝鮮半島を支配していたときに、独立運動が起こった、というようなものと同じですね。

住職:でもメディアは、宗教対立であるというウソの情報を流すことによって、実態がわからないようにしているんです。

--なぜなんでしょう?

住職:うーん、、、「大本営発表!」って知っていますか? 僕もリアルタイムで知っているわけではないんですが、これは日本の戦時中の戦況を知らせるラジオ番組です。

--へぇー。

住職:大本営発表では、日本軍が負けていても、米軍の損害を多く言いたて、そして必ず最後に「わが軍の損害は極めて軽微なり」と報道していたんです。
原発事故の時、「ただちに健康に被害はありません」って報道していたでしょう?あれを聞いたとき、僕は「あっこれ、大本営発表と同じだ。日本って変わっていないんだな」と思いました。

--なるほど。

住職:報道のスポンサーは政府や株主ですからね。海外のメディアは、軍需産業が株主だったりするんだから、対立を煽るようなフィクションをニュースとして報道してもおかしくはないですよね。

--はぁ、、、、。

住職:僕には、「宗教対立は、人間の本質ではなく、あくまでも人為的に造り出され刷り込まれたものだ」だ思います。人間同士の自然なあり方を表に出して、世界に見せたかったというのが、僕が異宗教合同ソングを創った動機と言えば動機ですね。