臨時号 住職に聞く! アースキャラバン中東篇3

住職に聴く!

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。
喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

プロフィール

遠藤 喨及 東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください

臨時号 住職に聞く! アースキャラバン中東篇3

アースキャラバン2017中東 パレスチナ 南ヘブロンで道路づくり 神を讃える

 

-- 「悪」を考えるということは、つくづく人間を考えることだと思ったりします。

つかみどころがないけれど、必ず存在している。

 

住職: はい。

 

-- 前回のインタビューで住職が話されていた、

「・・・権威ある人、政府、ニュース、また皆が言っていることに従って行動することは正しい、

と信じることが、この世のすべての悪の原因なんですよ。・・・」について、

もう少しうかがいたいと思うのですが。

 

住職: ちょっと聞くと、「一体なぜ、判断を他者に依存することが

悪の原因だと言うのか?」と、思われるでしょうね。

なぜなら私たちは、他の人と同じようにふるまわないのは「悪いこと」として

教育されて来ましたからね。

 

-- そうですね。

家庭でも、“みっともないからやめなさい”とか、“誰もそんなことやっていないよ”、

などと言って子どもを躾けるのは、ごく当たり前に行われていますからね。

 

住職: さらに学校では、どんなに理不尽なことでも、

先生の権威や校則に従わなければ「悪い生徒」として認定されます。

そして成績を落とされ、上級の学校(いわゆる“良い学校”)には入れないようになります。

言わば、“将来を潰す”と脅され、従わされるシステムなんですね。

 

-- はい、、、。

 

住職: 自由で、豊かに発想溢れている子どもの内から、

そのように“躾けられ”教育された結果、どのような大人になると思いますか?

 

-- 権威ある人、政府、ニュース、皆が言っていることを信じて行動することが

「正しいことだ」として生きていく大人になるでしょうね。

 

住職: で、その場合の一番の盲点は何だと思いますか?

 

-- ?

 

住職: 本来、教育の目的とは、個人の持っている人間性や才能、

また創造性を掘り起こし、最大限に発現させること、、、これに尽きるのです。

 

-- そうですね。

 

住職: ところが今現に行われている教育は、真逆です。

暗記に時間を費やすことで自由な発想を抑える。

子どもが興味を持たない方法で一方的な授業が行われる。

子どもたちは、まるで監獄のような密閉空間に1日中閉じ込められています。

 

-- はい、、、。

 

住職: 先ほど言った一番の盲点が何かと言うと、

このようなシステムになっていることに疑問を持たないこと。

これが、まず1つ。

 

-- はい。

 

住職:そして疑問を持たないからこそ、この監獄のような洗脳的教育システムが、

意図的に作られていることに、全く気がつかないことだと思います。

 

-- えっ!? そうなんですか? 

 

住職: ただ、そんなことをいきなり言われても、

誰が何のためにそんなことをするのかわからないでしょう。

 

-- はい。

 

住職: また、“政府の教育委員会が、故意にそのようなシステムを

放置しておくはずがない”と思うはずです。

“彼らは一生懸命、将来国を担う子どもたちにとって良かれ、

と思って日々改善しているはずだ”、と。

みんな、何となくそう信じているはずです。

 

-- そうですね。

 

住職: だから、“そもそも本来の教育は、こんなものであるはずがない”

という発想にはならないんです。

その上、これがまさか故意に作られたシステムだなんて、

思いもよらないことでしょう。

またたとえ耳にしても、困惑するか、“そんなの妄想に決まっている”と

決めつけるはずです。

 

-- それを聞いて私自身、一体どう考えたら良いのか混乱しました。

 

住職: それはそうでしょうね。

でも、混乱の原因は何だと思いますか? 

 

-- 、、、。

 

住職: 心の中では、“確かに今の教育制度には問題が多い。

でも、政府や教育委員会、また学校は、子どものために有用なことを

やろうとしているはずだ。”と、思っているはずです。

 

-- はい。

 

住職: つまり、“現状はうまく行っていないにせよ、

根底には善意がある”ということが前提なのです。

“子どもの創造性や才能、人間性を潰す教育システムが故意に作られている”

と聞くことは、自分が信じているその善意を根本から否定することですからね。

 

-- そうですね。

 

住職: だから、そういうことを聞いたら居心地が悪くなるはずです。

現状が良くないことはわかるにせよ、

自分が信じている“他者の善意”を否定するのは、

人間にとって極めて不快だからです。

どちらを信じて良いかわからなくなって混乱するのです。

 

-- そうですね。

教育委員会にも先生の中にも、

いい人がいたり善意の人がいたりしますしね、、。

 

住職: 現場にいる、良い人や善意の人ほど苦しんでいますね、、、。

善意を信じるのか? それとも現状の原因が故意によるものであると認識するのか?

この二律背反を突き付けられることは多大なストレスですから、

“そんなはずがない。そんなことを考えるのは陰謀論者の妄想だ!”

と否定したくなるし、あるいは嘲笑したくなるんですね。

 

-- そうですね。

 

住職: ただ、はっきりしていることがあります。

それは一般の人間、教育の現場にいる教師、教育委員会の人間、

官僚、政治家、彼らのほとんどが、

“権威ある人や皆が言っていることは正しい”

と考える人間たちだ、と言うことです。

 

-- ああ、なるほど。

 

住職: だからもし政治家を当選させるために多額の献金をする企業が、

人間としての倫理や善意よりも企業利益を目的としていたらどうなるでしょうか?

 

-- 、、、。

 

住職: 分かりやすい実例を上げましょう。

アメリカの奨学金制度なんですが、民間の会社によって、

学生はサラ金よりも利率が高いプランを契約するように誘導されます。

その上、その後どんなに困窮してもその奨学金だけは

自己破産ができないシステムなんです。

 

-- えー、そうなんですか?

 

住職: 学生は卒業後、多額な高利の借金を背負います。

だから病気か何かで払えない時期ができれば、

借金取りが職場まで押しかけてきます。

その結果、職を失い、マクドナルドなどのファーストフード店で、

時給8ドル程度のアルバイトをすることになります。

さらに、高利の奨学金が返せずに家賃が払えなくなると、ホームレスに転落です。

これが今や「3人に1人が貧困」と言われているアメリカの実態なんです。

 

注:「貧困大国アメリカ」堤未果著 岩波文庫 参照 (3巻まで出ています)

 

-- すると、彼らはどうなるんですか?

 

住職: 実は軍隊に入ることで、借金がチャラになるシステムがあるんですよ。

 

-- えーっ!? ということは、まさか、、、?

 

住職: もしアメリカ政府が本当に国民全体のことを考え、

未来の学生たちのために良いことをしよう、と思っていたら

そんな法案が通るはずがありません。

 

-- 、、、。 いやあ、、。

国民は、単に利用する対象ですか、、。

いくらなんでもそこまでやるか? という気持ちになりますね。

 

住職: 実は、その奨学金制度の法案を通すサインをしたのは

オバマ大統領なんです。

その法案は議会を通ったのです。表向きは”民意”という形で。

 

-- ああ、、、。

 

住職: 経済的に裕福な家庭の子弟は奨学金を背負わなくて良いから、

軍隊に行かなくて済みます。

その反対に、貧しい家の子弟はどんなに優秀であっても、

奨学金という名の高利の借金を背負い、

返せなければ低賃金のアルバイトかホームレスか、

最終受け皿としての軍隊に行くのです。

 

-- 、、、。

 

住職: アメリカは常にどこかで戦争していますから、

兵士になって戦場に行き、人を殺して精神的に病む人も多い。

奨学金を取り扱っているのは、保険会社か何かだったと思いますが、

その会社は軍産複合体と株式などによって資金的な繋がりがあるはずです。

 

-- 法案が通るのは、善意や未来の国民のためではなく、

企業の経済的利益のためなんですね。

学生に高利の借金を背負わせて軍隊に入れるルートができている、

ということに驚きました。 

その仕組みを考え、実行に移して平気な人がいるということも。

 

住職: アメリカの奨学金と軍隊の関係について知ったのは、

7、8年前だったと思いますが、

その時僕は、いずれこの波は日本にも来るだろうな、と思いました。

そうしたら案の定、安倍政権が「改憲」を言い出した。

そしていつの間にか、学費も高騰していました。

 

-- 日本の学生たちが奨学金に苦しんでいるという話も、

最近よく聞くようになりましたね。それと改憲、

日本の軍事国家化とは繋がっていたんですね。

 

住職: 現行のシステムは故意に作られている、という話に戻しましょう。

なぜ学校は本来あるべき教育をしていないのか? 

それは、洗脳的な教育によって人々の心を、

“権威に従い、自分で判断せず、他の人が考えていることが正しいと考える”

ようにコントロールできれば、どのような法案でも

自由に通すことができるからですよ。

 

-- というと、、、。

 

住職: つまり政府がマスコミを使って宣伝し、

国民をある一定の方向で考えるように仕向けていけば、

民意を自由に操ることができるからです。

結果的に国民を苦しめることになる法案であっても、

民意の結果だったから仕方がない、と言えば済むからです。

 

-- なるほど。

 

住職: もっともその政府にしても、

何か特に実体があるという訳ではないんです。

というのは、例えば、高利の奨学金制度の法案を通したオバマや、

アメリカ議会の背後にいる企業は、オバマやその議員たちが当選するように、

最初から政治献金という名の投資をしていたからです。

彼らにしてみたら、“投資によってリターンを得ただけだ。”

ということになります。

 

-- でもみんなオバマに投票したんですよね? 

 

住職: オバマは言葉の使い方がうまいし、頭も良い。

有権者は、“オバマは黒人だから、きっと庶民の苦しみがわかるはずだ”と

希望を投影して期待したのです。

もっとも、有権者がそのようなイメージを持つように、

と様々な方法を使って宣伝しました。

その結果、みんながオバマに未来の希望を投影し、

オバマがアメリカを変えてくれると信じたんです。

 

-- はい。

 

住職: そもそも大手メディアは、国民のために放送しているわけでは

ありません。

宣伝費を払ってくれる企業のために放送しているのです。

みんな、そんな基本的なことを忘れてしまっていますね。

でも実際は、オバマは企業にとっては素晴らしい法案を、

そしてアメリカの一般国民の生活がさらに苦しくなる法案を通したんです。

 

-- そうなると政府とは一体何なのでしょうか?

 

住職: 現在、ほとんどの国の政府は、

多国籍企業の御用聞きみたいなものではないでしょうか。

私たちは「国家」があると思っています。

でも実際は、多国籍企業に献金もらって当選し、

政府の要職についた御用聞きが、その見返りとして企業の利益になるための

法案を通しているのです。

ここまで来れば、さすがに国家なんて幻想ではないですか。

 

-- 言葉もないですね。

 

住職: イギリスがインドを植民地支配した時、

マハラジャはそのまま残して、マハラジャに一般民衆を統治させたのです。

その結果、民衆の憎しみはマハラジャに対して向かったけど、

インドの資源を強奪している当のイギリスには直接矛先は

向かなかったんです。

 

-- なるほど。

 

住職: 言ってみれば各国の政府が、かつてのマハラジャで、

多国籍企業はかつてのイギリスのようなものですね。

だから、「国家なんか、あってないようなもの」ということなんです。

 

-- なんか悔しいですね。

 

住職: では一体誰が悪いのか? 

それら多国籍企業の社員にしたって、“給料をもらっているので仕方がない。

自分は、家族の生活のために働いているだけだ。何が悪い”、

ということになります。

 

-- うーん、、、。

 

住職: では、「学生に借金背負わせて軍隊に入れる」

なんていう構図を描いた社員が悪いのか? 

でも、金融企業や、軍産複合体で働く社員にしたって、

「わが社の」業績を上げ、効率よく兵隊を回してもらうために

やっているだけです。

 

-- 、、、。

 

住職: この世のほとんどの人間が、

「金だけ、今だけ、自分だけ」のために生きているのです。

もし自分自身が、この世のほとんどの人間と同じように、

自分と家族の生活のためを中心に生きているならば、

今の社会の現状に文句など言えないはずです。

 

-- “この世の「悪」の原因が、他のみんなが考えていることは正しい、

と考えることだ”とおっしゃったのは、

そのような意味だったのですね、、、。

 

住職:その上、“他の人間がやっていることは正しい”と

考える人間が相手ならば、戦争でも虐殺でも、

どんな悪いことでもさせることができるのですよ。

 

-- んー、、。怖いですね。それは本当に。

 

住職: 今、この世は、自分の考えで判断できない人、

恐怖にかられた人、地球の未来への責任を放棄した人たちが、

他の皆が認めた権威ある誰かという幻想にすがって、

自己の保身や利益を求めてうごめいているのです。

 

-- いやー、、それはホラー映画みたいです。

しかも他人事じゃない。

 

住職: 果たして自分自身は、自己の利益よりも

人間としての倫理や善意を優先して生きているのか? 

他者の幸福や地球の未来に対して責任を持って生きているのか?

世界の縮図である“場”に責任を持っているのか?

もし、場に責任を持たず、他者よりも自己の利益を優先し、

他者の幸福や地球の未来に責任を持たずに生きているならば、

この世の現状に文句など言えないでしょう。

 

-- 自分だって同じ、ということですからね。

いやむしろ、加担している、とさえ言えるのかも知れませんね。

 

住職: 僕がワークショップを通じて、

“気に従う生き方”をお勧めしているのは、

それが自分が知っている、唯一世の中を変える方法だからです。

 

注:2017年10月14日の法話「ニーチェのように、ただ一人歩め」の書き起こし

ドキュメントは以下です。ご参照ください。

https://docs.google.com/document/d/1l9itBl23cszNf4NApULJUmjmFSRB0ta31iXwy_tSBaE/edit

道路開通!

 

インタビュー後記

住職には、これまでも「悪」についてなにかにつけお話していただいてきました。

そして、はっとさせられ考えさせられた末にいつも自分の立っているのは、

“その先は自分で考え進むしかない”地点です。

大事なことであればあるほど自分で決めなくてはならない。

人生には必ずそういうときがある気がします。

まったくの孤立無援のようなときに、なにに依っていけばよいのか?

住職が話された気に従う生き方、それがどう世界の現状に影響するのか?

他者よりも自己の利益を優先する生き方に、希望を見出すことができるのか? 

そんな話を次回伺いたいです。

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