住職に聞く!寄り道篇(3) 極悪代名詞のダイバダッタが、、、。

住職に聴く!

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。
喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

プロフィール

遠藤 喨及 東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください

パレスチナにて、遠藤喨及氏
パレスチナにて

 

 


――前回は、悪(善)とは?罪とは何か?、被害者にとって、また加害者にとっての犯罪(行為)とは何なのか、、というところに話が及びました。
この善悪の問題と宇宙の法則。そのことについて話を聞かせていただけますか?

 

住職:まず仏教では、”この内、どれをやっても「無間地獄」に堕ちる”と言われているほどの重い罪があります。 それは「五逆罪」と言って、以下の五つなんです。

1. 父を殺す
2. 母を殺す
3. 聖者を殺す
4. 教団の和合を破る
5. 仏身から血を流させる

 

――なるほど。

 

住職:で、この中の3つの罪を犯した、言わばウルトラCをやった人が、お釈迦さまのお弟子にいたんです。

 

――誰ですか、一体それは?

 

住職:かの有名なダイバダッタという人で、お釈迦さまの従兄弟に当たる人です。手塚治虫の「ブッダ」にも出てきますよ。

 

――五逆の内、三つもですか? しかもお釈迦さまの従兄弟とは、、、。

 

住職:神通力もあって優秀な人だったらしいですけどね。

 

――何でまた?

 

住職:原因は、お釈迦さまに対る嫉妬心らしいです。
従兄弟で、お釈迦さまを子どもの頃から知っていたので、きっとライバル心を燃やしたんでしょう。
自分の優秀さを鼻にかけていたし、どうしても、「我(エゴ)」が抑えられなかったようです。

 

――具体的には何をしたのですか?

 

住職:彼は、お釈迦さまを何度か殺そうとしたんです。
でもお釈迦さまが神通力で未然に防ぎ、そのつど暗殺は失敗しました。
でも最後には、お釈迦さまの身体から血を流させた そうです。

 

――それが五番目の「仏身より血を出す」ですね。

 

住職:それから、高い境地にあった尼僧さんが、ダイバダッタをいさめようとしたんです。しかし逆に、彼女を殴り殺してしまいます。

 

――なるほど、それが3番目の「聖者を殺す」ですね。
女性を殴り殺すなんて、どうしようもない奴ですね。

 

住職:仕上げは、お釈迦さまの弟子500人を引き連れて教団を離れ、ダイバダッタ教団というものを作ってしまう。

 

――それが、四番目の「教団の和合を破る」なんですね。
それにしても、よくもまあ、そんな人間に、500人もの人がついて行きましたね。せっかく、お釈迦さまの弟子だったというのに。

 

住職:私も最初は、そんな地獄への道案内人みたいな人間について行くなんてこと、実際あるんだろうか?と思いましたよ。

 

――お釈迦さまは、ダイバダッタの悪行をあまり人には言われなかったんでしょうね。

 

住職:それを良いことに、逆にダイバダッタは、お釈迦さまのことを悪く言ったりしていたのかも知れません。

 

――まあ従兄弟だし、お釈迦さまも、彼が犯している罪をあまり他の人に言う気にはなれなかったとか、、、。

 

住職:ダイバダッタの嫉妬も、いつかは収まるだろうという期待もあったかも知れません。

 

――嫉妬って、される方は何だか自分が悪いみたいな気がしてくるってことありますよね。

 

住職:そうそう。でも、まさかお釈迦さまが、「もしかしたら、何か自分に問題があるのかな?」なんて、悩まれなかったでしょうけど。(笑)

 

――大勢の人を引き連れて行くなんて、恐らく ダイバダッタは口もうまくて、人の心をコントロールするすべを持っていたのでしょうね。

 

住職:お釈迦さまだって、全員に目が届くわけではなかったでしょうし。

 

―― お弟子たちだって、みんながみんが、悟っているというわけではなかったでしょうから、その500人の弟子も、日頃、我(エゴ)を抑えるのが大変だったんでしょうね。

 

住職:ダイバダッタは、その辺りの弟子の心のスキを巧みについて、密かに教団内のダイバダッタ派を増やしていったのだと思います。

 

――それにしても、ダイバダッタと一緒に釈尊のサンガをやめた500人には、お釈迦さまの偉大さがわからなかったなんて、、、。私は未だに信じられないという思いでいっぱいになります。

 

住職:でもね、お釈迦さまが亡くなった時に、「やったー。これで今日からは自由にやれるー」なんて喜んでいた、不届きものだっていたらしいですよ。

 

――そうなんですか、、、。

 

住職:それを聞いた摩訶迦葉(お釈迦さま亡き後、教団を継いだ人)が、教団の将来に不安を抱いたんです。
それで弟子を結集して、生前の釈尊の教えや戒律を編纂することを決心したそうです。まあ、結果的には、それが仏教を後世に残していくための最初のステップになったんですが。

 

――へぇー、そうですか。で、ダイバダッタ教団はその後どうなったんですか?

 

住職:中国から経典を求めてインドへと旅した法顕が、ダイバダッタ教団に遭遇したと報告しているところから、200年続いたと考える学者もいるそうです。もちろん、今は滅んでいますが。

 

――そうですか。

 

住職:ダイバダッタ教の入団の誓いがまた面白い、と言っては何ですが、「釈迦を覚者(悟った人)とは認めない」というのが入っていたそうです。

 

――男も、ここまで嫉妬に心を燃やすんか(関西弁)、という感じですね。

 

住職:その誓約を作ったときのダイバダッタの気持。ちょっと、想像しただけでも疲れますわ(関西弁で返す)。

 

――笑
で、ダイバダッタは経典でも有名人なんですね。

 

住職:そりゃっ、もう。悪人の象徴として名高いですよ。
逆に、 カルトの教祖にそそのかされて、100人だか1000人だかを殺したアングリマーラなんかは、立派な弟子として更正しているんですよ。

 

――へぇー、そうなんですか。

 

住職:もちろん、毎朝托鉢に出るたびに、殺された人の遺族や一般人が石を投げるので、血まみれになって帰って来たそうですが。
でも、最後には、自身も深い境地に入って行くし、人々も認めて行くんです。

 

―― カルトの教祖にそそのかされたなんて聞くと、元オウム信者で罪を犯した人と重なって聞こえますね。

 

住職:そうなんですよー。純粋な気持でやっていたけど、信じ込んでしまったが故に、結果的に罪を犯すことになってしまった人に対しては、同情的な気持になります。被害者家族の気持を考えたら、そう言ってもいられないんですが。

 

――でもダイバダッタは、それとも違うんですね。

 

住職:原始経典の頃から、「ダイバダッタは生きながら無間地獄に堕ちたとか、阿鼻地獄に堕ちている」などと語られています。

 

――500人もの人々をそそのかして、仏さまの教えを裏切らせた。
この罪が重いということもあるんでしょうか?

 

住職:自分のエゴのために、仏の教えという「真理」から人を遠ざける行為ほど、罪深い行為はないと思いますよ。そのカルマの重さは、肉体を殺すこと以上であると思います。

 

――どうしてですか?

住職:結果的に、それは人の心の中に住む仏さまを殺すことになるからです。
「五逆罪」ですら、”仏から血を流させる”までで、”仏を殺す”とは出てこないぐらいですよ。だから、人の心の中に住む仏を殺すほどの重い罪はないということになります。

 

―― でも、肉体が生命と思っている現代人には、意外な感じがするかもしれませんね。心の中の仏を殺すほどの重い罪はないというのは。

 

住職:そうですか。

 

――それにしても、お釈迦さまは、さぞおつらかったことでしょうね。

 

住職:それはもちろん、そうでしょう、、、、。
いくらダイバダッタにそそのかされたとはいえ、500人の弟子たちが教えを理解せずに、地獄への道案内人について行ってしまったのですから。
しかしまた、精神的な修行者の集まりには、よくそのような裏切り者が現れるんですね。

 

――キリストのユダとか、ですか。

 

住職:はい。親鸞上人に至っては、何と自分の息子でした。その息子を義絶(勘当)したんですよ。

 

――親鸞上人もつらかったでしょうね。

 

住職:はい。さぞ悲痛な想いだったと思いますよ。
純粋な使命感をによって活動するリーダーを中心としたグループからは、裏切り者が生まれることがよくあるんです。
そしてこのテーマは、心理学的にも、とても興味深いものがあります。
でも、このテーマを掘り下げてしまうと、今の善悪の問題からはずれていくので、ダイバダッタの話に戻しますが、、、。
代表的な大乗経典のーつである、法華経に「提婆達多品」という章が あるんです。

 

――はい。

 

住職:ここでは何と!お釈迦さまが、「ダイバダッタは私の過去世の先生だった。未来世においてダイバダッタは、天王如来という仏さまになる。」と、宣言(授記)されているんですよ。

 

――お釈迦さまを殺そうとし、高い境地にある尼僧さまを殴り殺し、最後には500人をそそのかして、教団を分裂させてしまったダイバダッタ。
経典で極悪人の代名詞のように言われているダイバダッタ。無間地獄にいるダイバダッタ。
そのダイバダッタが、お釈迦さまの過去世の先生であり、未来世において仏になることを約束されていると、、、。ここでは評価が、全く逆転してしまうんですね。

 

住職:しかも、「この真理が理解できない奴は悟れない。お浄土に往けんぞ」なんて書いてありますよ。

 

――シェー! (赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」に出て来る、イヤミのポーズ)と言いたくなりますね。

 

住職:でも、このナゾに、宇宙における善悪の秘密が隠されているんですよ。

 

―続く―

 

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