住職に聞く!寄り道篇(7)歴史に潜む人類の無意識

住職に聴く!

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。
喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

プロフィール

遠藤 喨及 東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください

島根県 浄土宗和田寺の如来像
島根県 浄土宗和田寺の如来像

 

 


和田寺住職、遠藤喨及氏遠藤喨及プロフィール

東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。
1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。
また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助NPOアースキャラバン事務局等、さまざまな精神文化の発信拠点となっている。
著書に、「<気と経絡>癒しの指圧法」(講談社+α新書)、「気の経絡指圧法安らぎのツボ実技篇」(講談社+α新書)、「気心道」(だいわ文庫)、「タオ指圧入門」(講談社α文庫)等があり、いずれも数か国語に翻訳出版されているほか、五カ国語で出ているDVDブック「気心道とタオ指圧」(タオ出版)、DVD「<気と経絡>タオ指圧」(医道の日本社)等の映像がある。 一方、音楽家としては、ミディレコードよりライアル・ワトソン推薦版である「ウォーター・プラネット」を含む、五枚のソロアルバムをリリースし、内外のテレビやラジオでオンエアーされている。また、自ら率いるバンド、遠藤りょうきゅう& LAMANI でもCDアルバム「アミリタ」を発表し、ライブ活動を行っている。
遠藤喨及個人ブログページ  http://endo-ryokyu.com

 

 


寄り道篇(7)

 

 

――この寄り道篇では、善悪というものがテーマになりました。

 

住職:善悪は、人間にとって根源的なテーマのーつですしね。ドフトエフスキーにも善悪をテーマにした小説がありますね(『罪と罰』)。「使い道のない金を溜め込んだ強欲なばあさんを殺し、若い自分がその金を有効に使うことは、果たして悪なのか?」というような話ですが、、、。

 

――この寄り道篇を通して感じたのは、悪を定義することは私にはできないということです。同時に、自分の中にもあらゆる形で悪の存在を感じるということです。

 

住職:キリスト教作家の遠藤周作氏が、“自分の中に悪はないと言い切れる人がいたとしたら、それは、よほど浅い人生観を生きている人だ”、と。
たしか、悪をテーマにした小説に関することで、そんなことを述べていた記憶があります。

 

――でも、オウム事件や戦争犯罪などを考えると、悪とは何かがわからなくなることがあります。

 

住職:オウムの犯罪と戦争犯罪、政治犯罪には共通性がありますしね。

 

――それは、どんなところですか?

 

住職:戦争犯罪は、人間の獣性が暴走して起きることもあれば、上官の命令によって、何の罪もない市民を殺さなければならなくなって、起きることもあります。たとえば、戦争中、占領地では、どこの国も例外なく“スパイがまぎれこんでいる”などの理由で、一般市民を虐殺することがあります。

 

――なるほど。

 

住職:また、広島にLittle Boy(原爆)を投下し、一般市民を虐殺したB29の搭乗員も、オウムの場合と同じように、上からの命令によって行っているのです。

 

――その辺りが共通しているんですね。

 

住職:話がちょっと脱線してしまいますが、原爆を落とした理由として、戦後アメリカが主張しているのは、「戦争を早く終結させるため」でしたね。

 

――はい。

 

住職:しかし原爆投下は、ターゲットを軍人や軍事施設に絞っておらず、一般市民が被害に遭うことが明白です。
だからこれは、ジュネーブ協定に違反する明確な戦争犯罪なんです。
したがって、アメリカの主張は単なる言い訳で、これは、戦勝国の都合の良い創作物語に過ぎません。
極東軍事裁判でも、原爆投下が戦争犯罪であると説いた、アメリカの弁護士がいたぐらいです。

 

――そうだったんですかぁ。

 

住職:僕は何も右翼というわけではないので、当然、日本のことも言います。例えば「日本が朝鮮半島を占領したのは、ロシアの南下を防ぐため」などという人がいます。しかしそれは、「隣の家に、誰かが強盗に入ろうとしていたから、その前に、自分が強盗に入っただけだ」と言っているようなものです。

 

――ロシアも日本も、当時の列強諸国は、人の土地を奪う強盗のようなことをしていたというわけなんですね。

 

住職:はい。それから、戦後の自虐史観では、先の戦争は日本の侵略戦争だったということになっています。しかし実際には、アメリカやイギリス、フランス、オランダ等が強盗して、他人の富を貪っていたら、別の強盗が現れて彼らを追い出したのが、日本だったということなんです。
だから本当は、植民地を持っていた欧米諸国に、日本を批判する資格はありません。

 

――それもそうですね。

 

住職:ただ、誤解のないように述べておきますけど、僕は別に憎しみを煽っているわけではないんです。僕は、人が人の自由を奪ったり、まことしやかなウソをついたり、 人を傷つけたりなどに腹が立つだけで。

 

――わかります。

 

住職:そもそもアジア諸国は、太平洋戦争によって、はじめて被害に遭ったわけではありません。そのずっと以前から、欧米の列強に植民地にされて土地を奪われ、反抗する人々は殺されたり自由を奪われたりなどの被害を受けていたのです。その内容たるや、実際には酷いものです。
西洋史の恥部ですから、あまり一般に知られていませんが。

 

――、、、、。

 

住職:そういえば二年前、中国で、チベット人が失った自由について述べたら、その若い中国人は、「チベットがないと、中国が侵略されるんだ!
中国が守れないんんだ!」と、ムキになって反論していました。

 

――そうですか、、、。

 

住職:僕は、「だからと言って、人様の国を乗っ取って、人々の自由を奪ったり、文化を破壊したり、拷問したりする権利があるわけないだろう」と思いましたけど。

 

――ほんとうに、そうですよね。

 

住職:中東でも同じことが起きています。パレスチナが、占領国イスラエルに一方的に自由を奪われることによって、抗議行動やテロが起こる。すると、「テロを防ぐために自由を奪わなければならないんだ」とイスラエル側は報復爆撃したらい、さらに自由を奪っていきます。
「自分たちがテロが起きる原因を造っておいて、何言ってるんだろう?」と思いますが。

 

――はい、はい。

 

住職:侵略国に生まれると、戦争等によって、ある種の強盗や殺人に加担させられることがあります。
その人間としての犯罪行為を、嫌々やるにしても、あるいはプロパガンダによって、それが正しいと信じてやるにしても、共通しているのは、上からの命令によって行っているということです。

 

――そういう意味でも、オウム事件や戦争犯罪のように、上からの命令によって犯した人の罪とは、悪とは、業とは何だろうか? と考えさせられますね。

 

住職:これは本当に、大きなテーマです。日本もナチスも、上官の命令にしたがった兵士たちが、大勢、戦犯として裁かれましたが、、、。

 

――ところで、オウム事件と、革命や政治クーデターのような政治犯罪との共通性はどこにあるんでしょうか?

 

住職:国家間の戦争の場合は、取りあえず、敵国の人間は、みな悪い奴ということにします。そうして理性をマヒさせて、自分を納得させるわけです。
まあ基本的には、国家がそうして群衆心理を煽るのですが。

 

――はい。

 

住職:でもね。少し理性的に考えたら、人間なんてどの国に住んでいようが変わりがあるはずないんですよ。皆、同じように家族がいて、友だちがいて、、、、誰かを好きになったり、人間関係や、小さなことでクヨクヨ悩んだりして、日々暮しているだけで。

 

――それもそうですよね。

 

住職:だけど、そんなこと考えたら、戦争なんかできません。だから、取りあえず、みな悪い奴ということにしておくわけです。タリバンの奴らは悪いとか。パレスチナ人はみなテロリストだ、とか。

 

――はい。

 

住職:で、革命やクーデターになると、これとは少しニュアンスが変わります。
その暴力行為が、世の中全体のためになると信じて、人を殺すわけです。

 

――オウムの信者もそうだったんですね。

住職:はい。これは救済行為だからと言われて、サリンを撒かされたわけです。もっとも、こんなことは古くからあったことですよ。
キリスト教徒による宗教戦争や、イスラム教徒への虐殺。
また近代では、共産革命やイスラム原理主義者によるテロも同じです。
皆それが正しいことだと信じて行ったのです。

 

――オウム事件とクーデターに共通しているのは、彼らは、それが世の中のためになる、信じて行うことなんですね。

 

住職:日本でも戦前に、二二六事件という軍事クーデターが起きました。
その志には、心情的に大いに共感できるところがあります。もっとも、失敗して多くの人が処刑されました。有名な「北一輝」という日蓮宗系の革命家も、その中の一人です。

 

――彼のことは、手塚治虫もマンガに書いていましたね。

 

住職:チェ・ゲバラもそうですが、北一輝は、革命家に憧れる青少年の心を刺激するものがあるんですよ。

 

※北一輝/戦前の思想家、革命家。国家社会主義運動指導者。
二・ニ六事件後、軍法裁判により刑死。
主著『日本改造法案大網』

 

――チェ・ゲバラと北一輝に共通しているのは、無私の心ということなんでしょうね。法華経を懐に抱いて、刑場に消えたというところなんかも、何だか映画みたいな最後ですね。

 

住職:クーデターが失敗した場合、二二六事件のように、実行者は犯罪者となり処刑されます。しかし成功した場合、旧政治体制の中核にいた人間は、逆に犯罪者として処刑されたり、また追放されたりします。

 

――仮に成功すれば、国の指導者になるんですものね。

 

住職:ジョージワシントンだって、毛沢東だって、スターリンだって、皆、そのようにして国の指導者になったわけです。

 

――それも、そうですね。

 

住職:戦争では、負けた方が「戦争を起した悪い奴」という汚名を着せられ、指導者は処刑されます。だから戦争の結果、悪人とされた人は、ようするに負けた側にいた人ということです。だから歴史というのは、戦争に勝った側が自分を正当化するために書いた、創作フィクションなんです。

 

――なるほど。

 

住職:西部劇では、インディアンは悪者になっているでしょう。

 

――はい。

 

住職:でも、実際は逆です。悪い奴らは、平和に暮していたインデアンの土地を侵略した、ヨーロッパからの移民なんですよ。

 

――それもそうですね。

 

住職:おそらく日本人も、朝鮮半島からやって来て、アイヌ人の土地を奪ったという過去を背負っているとは思います。あるいは、弥生人が縄文人を 駆逐したということなんでしょうけど。

 

――そうだったんですね。

住職:まあ結局、人類全体の悪やカルマが、国レベルで現れたのが戦争という言い方ができるのかも知れません。そして時代のカルマや悪が、個人レベルで現れたのが、犯罪史に残るような大事件なのでしょう。

 

――はい。

住職:人類の歴史は、戦争の歴史でもあるんです。なにしろ文明は、戦争によって発達してきた面が否めないんですから。

 

――そうなんですか。

 

住職:医学を含めて、基本的にテクノロジーの発達の多くがそうです。
最近の例で言うと、今、人類史上、第三の革命が進行中ですが、その情報革命をもたらしているコンピューターにしても、もともとは軍事の民間への転用ですからね。

 

――なるほど、そうでしたね。でも、人類の歴史が戦争の歴史だったなんて、ちょっと考えたら、恐ろしいことですね。

 

住職:だからこそ、戦争という悪を掘り下げることは、歴史に潜む人類の無意識そのものを掘り下げることにもつながるんです。また、この悪と向き合って、人類が、どう精神を飛翔させるのかというテーマともなり得るんです。

 

――そうなんですか?

 

住職:具体的な例で言えば、仏教を大きく伝道したインドのアショカ王は、もともと戦争で殺戮ばかりやっていたんです。でもある日、その殺戮のカルマに気づき、平和主義者となりました。そして、仏教伝道者の国王となり、インド中に仏舎利塔を建てたり、海外にまで伝道師を派遣したりしていました。

 

――へぇー。

 

住職:また、キリスト教の聖フランチェスカは、戦争に従軍して傷を負い、その結果、突如神に目覚め、全財産を投げ打って、貧しい人々と共に住む伝道者となりました。

 

――そうですか。それはすごい話ですね。

 

住職:それから、以前述べたように、大乗仏教が生まれたのは、アレキサンダー大王の軍隊によるインド遠征によって起きた、ギリシア文化とインド文化の融合がきっかけだったのです。

 

――何がきっかけで新しい文化が生まれるか、、、。わからないものですね。

 

住職:戦争は、人類に進歩をもたらすきっかけを造ってきました。
そして戦争は、人類のカルマの縮図でもあります。まただから、この世に地獄を生み出すのです。そしてこれまで人間は、その地獄をきっかけとして、あるいは地獄見ることによって、技術を進歩させたり、また精神を飛翔させたりもして来たのです。

 

―続く―

 

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