「癒しものがたり」アーカイブ 触れずに治ることもある

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触れずに治ることもある

 

 彼女は、タオ指圧によって人生が変わってしまったのだ。

というと、そりゃあ大げさだろう、という向きも無きにしも非ず、と思うが、

彼女の場合はそうとしか思えない。

何しろ、施療をさせていただいた本人もこういうこともあるのか、

と驚いたのだから・・・。

 

初めは腰の痛みから

 

腰に痛みがあった。

仕事の関係で10時間も同じ椅子に座っているからだ、とジョウは言った。

これが1回の施療で取れてしまった。

2度目にあったとき、彼女はそう言って喜び、そして、仕事関係の軋轢やら、

家族関係の悩みやら、恋人がプロの泥棒で刑務所に入っていてもうすぐ出てくるが、

もう終わりにしたい、などなど思い切り話してくれた。

そのときは施療をして終わった後に「私は今、すごく泣きたい気持ちだが泣かない」といって

無理に笑っていた。

彼女の感性はスーパー・センシティブというか衝撃を受けやすい・・

要するにそれが原因で年中傷ついている。

そのくせアイリッシュだからだろうか、やたらと頑固なところもある。

「泣かない」といったら泣かないし、酒を飲まないと決めたら飲まない。

これは家族がそろってアル中で、酒乱も何人かいて、それを見て恐れているからだ。

飲めばいくらでもいけると言っていた。

とにかく施療はとりあえず終わって4週間たった。

 

首が回らなくなった彼女

 

「Hi,This is Jo….」と、電話があった。

“腰は全然平気だが、首が回らない”という。行ってみると話し始めた。

「恋人は出所してきて、もう会わないと、言い渡した。

上司の専横がひどく、人がどんどんやめて、自分もやめたい。

新しい仕事のアイデアはあって、いけそうだが、

私はいつも、判断を間違えてうまくいったことがないから、

いまいち踏み切れない。

そんなことを考えていたら首が回らなくなった。

しゃらくさいから仕事を休んでやった。」と言ってさびしく笑った。

さびしいのだ。

彼女の一言一言にさびしさがまつわり、その重さで方向性を失っている。

「私はいつも、間違っている。なぜあんな男を選んだのか。

あんな仕事は最初からいやだった。」と言い切る彼女。

私は受け止めようと必死だった。どうしてよいかわからない。

“施療を始めるから横になりましょう”とも言える状態ではない。

ただ教わったとおり、聞き、想像し、共感しようとし、彼女の話すことを

繰り返した。

 

 

 

最後は一指も触れずに治ってしまった

 

「ジョウ、あなたはいつも間違っているんだね?」と私。

「そうだ、と思うけど・・・」 ほんの1分前には”間違っている”

と言い切っていた彼女の言葉が変化していた。

このときに私の中で何かがはじけた。

「あなたは間違った判断を下すのではなくて、決めたことが間違った方向

に行ってしまうのが、なぜだかわからないんじゃないの?」

という問いかけが口をついて出てきた。

彼女は私を直視した。

「例えば、無意識のうちに”彼氏がいたらなあ”と思う。そして”誰かにあったときに

いつも間違えるからなあ”とも思っていたらどうなる?」と私。

「・・・・・」

「もしあなたがいつも間違っているとしたら、

そう思っているのもきっと間違いだよね。」さらに私。

彼女は笑った。

笑うとグレン・グレイスに似ている。

そんなやりとりがしばらくあり、「施療を受けようと僕に電話したことも、

間違いだと思うかい?」と問いかけたとき、彼女は首を横に振っていた。

「ジョウ、首はどうした?」

「!! Oh,my god! Oh,my goodness!! Can’t believe! Ha,ha!」

この日は、まったく一指も触れずに治ってしまった。

それから、しばらくたって、ジョウからEメールが来た。

“仕事をやめた。彼とは会っていない。うわさによるとまた逮捕されたようだ。

この間、10年ぶりにある友人とあって、ビールをしこたま飲んじゃった。

それから飲んでないが、気にならないから、また飲めそう。

今の仕事は時間が自由だから、今度ランチをご馳走したいから,

よかったら連絡して。”と。

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