住職に聴く!2018年 6月号

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。

喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。http://endo-ryokyu.com/blogs/

 

アメリカ大使館のエルサレム移転は世界に何をもたらすか?

   ー今この時代に私たちはどう生きるのか?ー


-- 現在、ほんとうに抜き差しならない状況が

世界を覆っている気がします。

どの状況ひとつとっても、

それを解決できる日はくるんだろうか?

と思って、絶望的な気持ちになってしまいます。

 

住職: そうですか?

 

 -- イスラエルのアメリカ大使館が

エルサレムに移転することになり、

世界がより悪い方にいっているのではないか

と感じている人は多いのではないでしょうか?

 

住職: イスラエルのアメリカ大使館移転に関しては、

僕は“トランプがぶち上げているだけだろう”と

タカを括っていたので、完全に読みが完全に外れましたね。

<トランプ大統領>

 

-- どうして“トランプは言っているだけだろう”

と思われたのですか?

 

住職: “メキシコ国境に壁作るぞ!”とか、

“北朝鮮を空爆してやる!”と息巻いてたのと

同じようなものだろう、と思っていたんですよ。

まさかトランプが大使館移転を実行に移す、

とまでは考えていなかったんです。

読みを外したのは、

パレスチナ人やイスラム教徒の人たちの

心痛を慮るあまり、目が曇ったんだと思いますね。

 

-- でも実際、メキシコ国境の壁も

今のところ造られる気配はないと思いますし、

南北朝鮮は平和会談までするところまで来ましたね。

 

住職: トランプは、世界各地から軍を

引こうとしていると思いますね。

それは、就任演説で暗に(ある意味では、あからさまに)

言っていたように、

アメリカの基幹産業である軍産複合体の力を

弱めるためでしょう。

 

-- どのようにしたら、

世界中から軍隊を引かせて、

軍需産業の力を弱めるなんていう、

途方もないことが可能になるのですか?

 

住職: いやあ、実際には大変だと思いますよ。

ベトナム戦争から手を引こうとした

ケネディ兄弟も暗殺されましたしね。

トランプも暗殺を恐れて

マクドナルドばっかり食べているらしいし。(笑)

だから僕も、一体どうやって軍産複合体を

弱体化させるんだろう?と思っていました。

正直よく分からなかったんです。

そうしたら、普通なら考えもつかないような

方法でやっているんですね。

しかも分からないように。

 

-- そうなんですかあ?

 

住職: 当初は単純に、

前々回のインタビュー※で申し上げた、

”「アメリカ大使館をエルサレムに移転する」

と宣言して実行に移さないことによって、

アメリカに対する世界の不信を招き、

どこの国からも頼りにされなくするのだろう”

なんて考えていたんです。

今から考えると浅い読みで、お恥ずかしい限りですが。

※ https://taosangha.com/2018/01/05/j20180105/

 

-- 大使館のエルサレムへの移転は、

ほとんどの国は否定的な反応を示し、

国連でも反対決議が為されましたしね。

 

住職: しかしトランプはそれを強行した。

イスラエルのネタニアフ首相は大喜びしています。

でもこれ、必ずしもイスラエルにとって

都合が良い結果になるとは限らないんですね。

 

-- なぜですか?

 

住職: 今までパレスチナ問題は、

”アメリカ主導の元に解決する”という

暗黙の了解がありました。

でもアメリカは実際には何もせず、

イスラエルのやりたい放題だったんです。

パレスチナ内に入植地を拡大し、

パレスチナの土地を奪って行く、

ということがずっと続いていたのです。

 

-- 今までの状態は、

イスラエルにとっては都合が良かったんですね。

 

住職: では、今後はどうなるのか?

今さらアメリカが、“イスラエルとパレスチナ

の仲介役をやります”と言ったところで

もはや誰も相手にしません。

その上、トランプはイラン核合意からも

アメリカを離脱させました。

 

-- 「イラン核合意」というのは何ですか?

 

住職: 「イランが核開発を大幅に制限したら、

アメリカやヨーロッパなどの国は、

経済制裁を解除しますよ」という取り決めです。

これをイランが、アメリカ、ロシアなどの

6カ国とで、2015年に合意したんです。

でも、この合意から、アメリカだけが離脱したんです。

 

-- その意味するところは、、、

 

住職: 表向きは、”イランの合意なんて怪しい”

などの難くせをつけていました。

でもトランプの真意は、

イラン核合意からの離脱によって、

アメリカがこの地域に口出しできなくすることです。

 

-- どうしてですか?

 

住職: 口出しできなくなれば、

軍隊だって理由をつけて派遣することは

できなくなりますからね。

 

-- ああ、そうか!

 

住職: シリアにしても、ロシア軍とシリア政府軍が

イスラム国や反政府軍を打ち負かしたようです。

すでに終結のゴールが見えていて、

プーチンとシリアのアサド大統領が、

シリアが平時に戻ってからの

国家の立て直しについて、話し合っているそうです。

 

-- では、シリア内戦が終わるんですね。

良かったです!

 

住職: シリアでは、トランプがあまり効果のない

子供だましの攻撃だけして、

実際にはロシアに任せて行ったんです。

それでアメリカのマスコミは、

“トランプがロシアと繋がっている!”

と盛んに宣伝していたんですね。

 

-- うーん、、、。

やはりアメリカのマスコミは、

軍産複合体の宣伝機関なんでしょうかね。

 

住職: エルサレムへの大使館移転によって、

アメリカはイスラエルと一体

であることを世界に示しました。

それは同時に、中東和平の仲介役を完全に

降りた、ということでもあるんです。

逆に言えば、パレスチナ問題に対して

口出しできなくなった、ということです。

 

-- そうなると

イスラエルはどうなるのでしょうか?

 

住職: アメリカはイスラエルに対して、

1日にして100億円という、

途方もない額の支援をして来ました。

それで、世界第4位の軍事力を誇って来たのがイスラエルです。

しかし、それだけの軍事力がありながら、

かつて2006年にはヒズボラ

(レバノンを中心に活動する宗教軍事組織)

と闘っても打ち負かせなかった。

 

-- そうだったんですか。

 

住職: イスラエルに負けなかったヒズボラは、

アラブ民衆に英雄視されています。

これに、今後6か国との核合意によって

台頭してくる宿敵のイランが加わります。

シリアの内戦も終わり、ロシアの後ろ盾の元に、

イスラエルの旧敵であるシリア

も立ち直って行くことでしょう。

 

-- はい。

 

住職: でも、イスラエルの後ろ盾である

アメリカ自身の力が及ばなくなれば、

アメリカの傀儡であるサウジアラビア、

エジプト、ヨルダンなどのアラブ諸国も、

これまでのように口だけの批判でなく、

現実的なイスラエル非難に回る可能性があります。

サウジアラビアは、アメリカ資本と結びつきが強過ぎるでしょうが、

ヨルダンは国民の三分の一がパレスチナ人だし、ガザに隣接し、

イスラエルの非人道行為に間接的に加担しているエジプトも

今後、国際非難をどうかわすのか? エルサレムをイスラエルの首都に取られ、

イスラエルへの具体的な非難に回らなければ、

とてもイスラム教徒である自国民を納得させれないと思います。

 

-- そうなって欲しいですね。

 

住職: トルコは、イスラエル批判の急先鋒ですし、

シリアやイランだけでなく、クエートももちろんそうです。

 

-- アラブ諸国に取り囲まれているのが

イスラエルですものね。

 

住職: 白人がパレスチナに無理な理屈を

付けて作った植民地国家ですからね。

それでも以前は、世界の警察を豪語する

アメリカの後ろ盾があった。

それにヨーロッパ諸国は、ホロコーストを

持ち出されると何も反論できなかったんです。

それでイスラエルは、今までどんな無茶苦茶な

ことをしても、涼しい顔ができたんですね。

 

-- でも、後ろ盾のアメリカ自身が、

トランプの作戦によって、

これまでのように世界に口出しできる

ナンバーワンの大国ではなくなろうとしている、、、。

 

住職: そうなるとイスラエルも、

アラブ諸国のプレッシャーや、

“パレスチナを独立させろ”という国際社会の声を、

いつまでも無視し続けることができなくなります。

現にEUが、今回のイスラエルのガザ住民に対する攻撃を、

戦争犯罪として調べることになったそうです。

イスラエルの顔を立てて、ハマスも調べる、

とは言っていますが。

 

ーー イスラエル は、

どうなって行くんでしょうか?

 

住職: 中東問題に関してアメリカに頼れないないなら、

ロシアに仲介を頼むしかなくなります。

やがてイスラエルは、自らに対して批判的な

ロシアが仲介する、パレスチナとの

交渉テーブルにつかざるを得なくなる、

ということです。

 

-- 一日も早くそうなることを

願わずにはいられません。

ところでアメリカがイスラエルに行なっている、

一日100億円の支援は今後どうなって

行くのでしょうか?

 

住職: これに関しては、今後どうなるのか、

今一つまだ分からないです。

アメリカ選挙民からの批判がここに向かえば

変わって来るでしょうけどね。

詳細を調べたわけではないので

はっきりしたことは言えませんが、その多くは

イスラエルがアメリカの軍需産業から武器を

購入する費用に当てているのでは

ないかと思います。

 

-- そのほとんどが、

パレスチナの占領支配に使われているわけですよね?

 

住職: 国連からは“返せ”と言われている、

シリアから奪ったゴラン高原の守備もあるでしょうし、

レバノンとの国境等もあります。

もちろん、パレスチナ内のイスラエル入植地に

使っている兵士の費用も膨大なものでしょうが。

<アースキャラバン中東2017 パレスチナでイスラエル軍に囲まれる 左端が住職>

 

-- ああ、、、。

 

住職: イスラエル海軍は、

ガザの漁師を銃撃しています。

また、ガザに救援物資を届けに来た、

トルコの人道団体の船を襲って9人を殺し、

多数に負傷させたり、

とロクなことをやらないんですけどね。

マビ・マルマラ号事件

 

-- まったく酷いですね。

 

住職: トランプが現在やっている一見、

メチャクチャなことによって、アメリカが、

「世界に睨みを効かせる一番の大国」の

地位を降りる方向に進んでいる

ことは間違いありません。

成功するかどうかは現在、綱引き中でしょうけど。

 

-- 成功したら、アメリカは他と同じような

一般国になって行くのでしょうか?

 

住職: 例えばイギリスは、

第二次大戦までは世界各地に広大な植民地を持つ

ナンバーワンの国だったんです。

逆にロシアや中国は貧しい国だったのが、

今や違います。

中国は世界第2位の経済大国になり、

ロシアは政治力でアメリカにすら負けない

国になった。

ロシアは天然ガスなどの資源もあって、

EUも敵対視できません。

 

-- 栄枯盛衰ですね、、、。

トランプは、明確な目的と意志を持って

やっているんでしょうか?

 

住職: さあ、

何せ※トリック・スターですから、

無意識の元型に動かされてのことでもある、

と思いますけどね。

※トリックスター:ユング心理学の概念で、

世界に変革をもたらすお調子者のこと。

 

-- それにしても、

アメリカ大使館のエルサレム移転が、

メリカ軍をアラブに派遣する理由を失わせ、

その結果、軍産複合体が力を

持てなくなることが目的だったとは!

 

住職: 実は、僕も

“まさか大使館移転までやるとは!”と、

本当に驚いています。

 

-- なんだか、

すごい歴史的な場面に立ち会っているような

気持ちになってきました。

さっきまで無力感にうなだれそうになっていたのですが、、。

 

住職: 世界はますます悪くなるのではないか?

とおっしゃっていましたね。

でも、たとえ世界大恐慌が来ていた時でも、

ひょうひょうと乗り切った人もいました。

逆に、まるで世界がバラ色に包まれているかのように、

皆が浮かれている時代にだって、

人生に絶望している人だっていたんです。

 

-- そういえば、そうですね。

 

住職: 世界がどうか?に影響されるよりも、

どうやって楽しい人生をクリエイトするか?

の方が大切ではないでしょうか?

 

-- なるほど〜。

そのところを仏教ではどう説いているのですか?

 

住職: 確か法華経に、

「たとえ衆生業火に焼かれようとも、

我が国土は安穏にして天人常に充満す」

という言葉があったと思います。

 

-- どういう意味でしょうか?

 

住職: “世界がどんな状態であろうと、

心の中にはいつも平和な、

天人たちがたくさん舞っているような

楽しい世界がある”ということです。

日常的に、このような心の状態になることで、

どんな時代であろうと、楽しい人生を

クリエイトしていけるようになるのが、

仏道修行の真の目的なんですね。

 

<編集後記>

“世界がどんな状態であろうと、

心の中にはいつも平和な、

天人たちがたくさん舞っているような

楽しい世界がある”・・・

 いまの世界を表層だけみると、

どんどん、人の心は業火に焼かれ、

荒廃しているように見えます。

この話を単にひとつの架空の話として受け取るか、

心の実相として受け取るか、、?

 住職の話は、世界は出口のない奪い合いの世界、、

そんな閉塞的な気持ちに陥っているとき、

「ほら、ここから出れば」と、

別のドアを開いてくれて、

そのとたん新鮮でおいしい空気を

たっぷり肺に吸い込むことができた

(生き返った)、、

みたいな気持ちになるのです。

 なぜ住職が開いてくれたドアを

自分でみつけられなかったのかな?

ということもいつも思います。

それにしても、トランプさんがどう動くかで、

日本も翻弄されるだろう、、

と思うと、正直穏やかな気持ちから

程遠くなります。

つい、住職に、日本は

どうなるんでしょうね?

と聞いてみたくなります。

(次回、お楽しみに)