住職に聴く!バチカン篇

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤喨及 東京生まれ。少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職の他、タオ指圧/気心道創始者、作曲&演奏家、海外支援や平和活動を行うNPOアースキャラバン代表、ゲームCHATRANGA考案者等、多才な活動で知られているスーパーボーズ。

90年の初頭から現在に至るまで、北米各地、ヨーロッパ各地、中東(イスラエル、パレスチナ)、オセアニアなど世界各地でタオ指圧、気心道、また仏教ワークショップを行っている。

またその足跡によって、世界10カ所にタオサンガが生まれ、各センターで、タオ指圧の施術と指導や念佛修行、海外支援活動などが行われている。

遠藤喨及個人ページ http://endo-ryokyu.com/

原爆の残り火、バチカンへ

 

原爆の残り火の火を吹き消すローマ法王

 

ーー 住職が中心となって平和活動されて

ア―スキャラバンの一行が、

日本から運んだ原爆の残り火を持って

バチカンに行き、3月20日にローマ法王

に届けたというニュースを拝見し驚きまし

た。

 

住職: 僕も驚きました。(笑)

 

ーー 法王が火を吹き消すお姿にジーンと

しました。

 

住職: はい。僕も感動しました。

 

ーー ア―スキャラバンの目的は、宗教の

壁、国境の壁、心の壁を無くすこと。

これが単なるスローガンではなく、

ほんとうに実現するという証拠を目の前で

みせてもらった、という気がします。

 

住職: 誰だって人間同士ですからね。

悩みなんかも共通しているはずだし、

ちょっと考えてみたら、

壁がなくなるなんて、

当たり前のことではあるんですけどね。

 

ーー どこから話を伺ったらよいのかわか

ませんが、、

なぜこのようなことを思いつかれたのです

か? 

つまり、、原爆の残り火をローマ法王に

届けるということですが、、。

 

住職: 1つには「焼き場に立つ少年」の写

真をローマ法王が配布している、

という話を聞いたからですかね?

「焼き場に立つ少年」

原爆投下後の長崎。
幼子の亡骸を背負って歯を食いしばり、
じっと火葬の順番を待つ少年。
アメリカの従軍カメラマンが撮影した。
この写真について住職が書いている

ブログ

ーー それでなのですか?

 

住職: あの写真に思い入れがあるのなら、

想いは核廃絶にも、またあらゆる武器の

製造禁止にも行き着くはずです。

また、他国の占領によって土地や自由を奪

われて苦しむ人々の気持ちにも共感しても

らえるはずだ、と思ったんですね。

 

ーー パレスチナのことですね?

 

住職: アースキャラバンは異宗教融合が

1つのテーマです。

それで、少しばかりキリスト教会を回って、

パレスチナ支援を呼びかけてみたことが

あったんです。

 

ーー はい。

 

住職: そうしたら、キリスト教徒の方々

が、イエス様の生まれたベツレヘムの街と

その近郊がどんな酷い状況にあるかを知

らない。

また、パレスチナに住む、

同じキリスト教徒の苦しみに対しても、

まったくピンと来ていらっしゃらない様子

に、衝撃を受けたんです。

 

ーー そうだったんですか、、、。

 

住職: 他者の苦しみへの共感こそが、

イエスの教えの根幹なはずです。

それに、被爆者の苦しみも、

銃火や爆撃にさらされ、

虐殺される者の苦しみも、

土地や自由を奪われる人間の苦しみも、

すべて共通しているはずです。

 

ーー はい。

 

住職: ならば、原爆の残り火を持って

核廃絶を、キリスト教徒のトップに直訴する

ことは、

『世界に対して、

“この世の人々の苦しみを共に無くそう”

というメッセージを象徴的に伝える』

ことになるのではないか、と。

 

ーー 普通は、ちょっと思っても

実現しようとまでは

考えないですよね。

 

住職: 僕は思慮が浅いんですよ。

だから、何でも簡単に実現できる、

と思い込んでしまう

ところがありまして、、、。

 

ーー ははは。

 

住職: 簡単にできる、と思ったきっかけ

は、ある日、ベツレヘムで、

サミー(アースキャラバン・パートナーの

ホリーランド・トラスト代表)が、

バチカンの秘書に会いに行くところに

出くわしたんです。

 

ーー はい。

 

住職: それでまあ、バチカンにサミーの

知り合いがいるなら、OKが出るだろう、

と安易に思ったんですね。

でも実際には、

世界12億人カソリック・キリスト教徒の

頂点に立つ人に会う、なんていうのは、

ただごとではなかったんですが、、、。

 

ーー それはそうでしょうね。

 

住職: 実現に至るまでの道のりは

尋常ではない

ハードなものでしたけど。

それはさておき、、、。

僕と同じように

「焼き場に立つ少年」の写真に対して

思い入れがあるローマ法王に

『原爆の残り火』を持って会いに行くなら、

ぜひ、被爆者の方にも

会って欲しいと思いました。

 

ーー はい。

 

住職: それでアレックス(トロント在住の

ア―スキャラバン・カナダ代表)に、

“ノーベル平和賞を受賞したサーロ節子さん

にも、一緒にバチカンに行って欲しいんだけ

どな。

カナダに住んでいるそうだから、

探して声かけてみてくれない?”

と言ったんです。

 

ーー すごい思いつきですね!

 

住職: そうしたら、“セツコ・サーローは、

僕の友だちなんだよ”

と言う返事が返ってきたので、

びっくりしました。

サーロー節子さん
at バチカン近くのホテルで

 

ーー ひぇー、なんという偶然! 

そんなことって、あるものなんですね!

 

住職: アースキャラバンやっていると、

奇跡みたいなことを

しばしば体験しますね。

 

ーー その言葉って、ウソじゃないんで

ね。

 

住職: ベツレヘムで思いついたことだし、

せっかくだから

世界最年少のジャーナリストとして有名な、

13歳の少女、ジャナも連れて行きたかった

んです。

彼女は、ベツレヘムから2時間ぐらいのとこ

ろの村に住んでいますしね。

 

ーー はい。

 

住職: ジャナは13歳。

節子さんも13歳で被爆された、、、。

僕は、きっとこの符号には

何かしら意味があるに違いない

と思ったんです。

 

ーー なるほど、、、。

 

住職: 僕らには、

世界に良き未来を創りたい

というだけの気持ちしかありません。

しかし、パレスチナ人の少女を

連れて行くことで、

政治的なことがからんでいると、

誤解されるかも知れない。

 

ーー はい、、残念ながら、、、。

 

住職: ならばいっそ、

平和を願う13歳の少女たちを、

世界から集めて

一緒に行ったらどうだろう?

13歳という符号の意味は、

そこに違いない、

と思ったんです。

 

上の右がジャナ(イスラム教徒)。
上の左がヤスミン(ユダヤ教)
下の左がミリアム(仏教)。
下の右が夕咲さん(キリスト教)

結果的に、4つの宗教の4人の13歳の少女たちが
世界から集まった。

 

ーー 壮大なことを考えられたんですね!

 

住職: それで平和を願い、

この世に正義をもたらしたい、

という13歳の少女たちを

世界から集めたんです。

カナダの先住民の少女も

探してもらっていました。

 

ーー カナダ先住民の少女もですか?

 

住職: 広島原爆の材料になったウランは、

カナダ先住民の土地から

採掘されたんです。

採掘に従事させられた

多くの先住民が、

ガンなどの病気になって死んで行きました

し、今でも健康被害があります。

 

ーー カナダ先住民は、

核の犠牲者だったんですね。

 

住職: パレスチナを軍事占領し、

植民地化しているイスラエルが、

原爆を持っていることは、

公然の秘密ですしね。

 

ーー 日本ではほとんど知られていないこ

ですね。

 

住職: 一般にパレスチナ人は、

広島・長崎を「核による虐殺」として、

日本に対してシンパシーや

思い入れが非常に強いんです。

 

ーー そうだったんですか。

 

住職: さらに彼らは、

戦後復興した日本に対して、

畏敬の念や

強い愛情を抱いています。

 

ーー それも、日本ではほとんど

知られていいことですね。

 

住職: まるで片思いみたいで、

こちらが恐縮するほどですよ。

 

不可能を可能にする秘訣とは?

 

ーー “イエスが生まれたベツレヘム近郊

村から来た、13歳の少女が手渡した

原爆の残り火を、ローマ法王が吹き消し

た”。この映像は、

世界的なニュースになりました。

 

住職: はい。

 

ーー 映像は世界の人々の無意識に、

「人類が、

核の悲劇や軍事占領による苦しみを

終わらせることの象徴」

として焼き付いた、と思います。

 

住職: 実は、誰が原爆の残り火を

ローマ法王に手渡すかまでは、

前日まで、決まっていなかったんです。

 

ーー ああ、そうだったんですか?

 

住職: そもそも何人が直接対面できる

かも不明だったし、

1〜3人だろう、

という知らせをもらったのも、

わずか数日前です。

 

ーー そうだったんですか。

 

住職: 実際のところ、

当日、謁見の開始1時間ぐらい前に、

“ローマ法王は、アースキャラバン全員と

対面することになりました”

と聞いたんです。

 

ーー  もう、びっくりですね!!

 

住職: 一体、何の力が働いたんだろう?

という感じです。

 

ーー パレスチナ人少女のジャナから、

ローマ法王に、原爆の残り火が手渡され

ようにアレンジしたことには、

何か意味があったんですか?

 

住職: おりしも謁見の数日前に、

ニュージーランドのモスクが

ヘイトクライムの対象となり、

50人のイスラム教徒が

殺されました。

 

ーー はい、痛ましいことですね。

 

住職: 前日、ディスカッションしたときに、

「こんな時こそ、

イスラム教徒のジャナが、

原爆の残り火をローマ法王に手渡すことが、

イスラム教徒への連帯を示すことになるし、

また、異宗教同士の融合を、世界の人々

に呼びかけるメッセージになる」

ということで、話がまとまったんです。

 

ーー それなりに、

深い考えがあってのことだったんですね。

ところで、このミッション・インポッシブル

(Mission Impossible)が実現した今、

住職はどのようなお気持でいらっしゃるの

ですか、、?

 

住職: 途中、何度も諦めかけました。

また、良い意味でも悪い意味でも、

通常ならあり得ないようなことが、

いくつも起こったんです。

正直、狐につままれたような気持ち、

というところですね。

言ってみれば、実現に手を貸してくれ、

また共に願ってくれた世界中のアース

キャラバン、タオサンガの皆で一緒に、

「まさかの針の穴をくぐり抜けた」

ような気持ちです。

 

ーー これまでも、ア―スキャラバンでは、

エルサレム・パレスチナまで原爆の残り火

を運んだことがありました。

ドキュメンタリ―映画

『BE FREE!
‐原爆の残り火をパレスチナへ‐ 』

を拝見して、

それだけでも、うわー、すごいなー

と思っておりました。

でも、今回のことで、

さらにア―スキャラバンは一体どこまで

くんだ? と、目が離せない気持ちです。

 

住職: “もうダメかも、、、”と思ったとき

にあきらめるか、 それとも、

“よし、これからどうやって実現しよう!”

と思うのか?

それこそが人生の勝負どきですね。

なにごとも、否定されてからが

実現の始まりなんですから。

 

インタビュー後記

冒頭の写真をみると

本当にみんな清々しい表情で、

見ているこちらもなんだか

楽しくなってきます。

 

ローマ法王との謁見が実現するまでの

苦労は、

「途中、何度も諦めかけました。

また、良い意味でも悪い意味でも、

通常ならあり得ないことが起こったんです。

正直、狐につままれたような気持ちですね。

実現に手を貸してくれ、また共に願ってくれ

た世界中のアースキャラバン、タオサンガの

皆で、まさかの針の穴をくぐり抜けたような

気持ちです。」という言葉から想像すること

ができます。

(何があったのか詳しく聞きたい!)

実現できたのは、

「僕らは世界に良き未来を創りたい

というだけの気持ちしかありません。」

という強い思いが、ローマ法王の心に

伝わったからに違いありません。

 

それにしても、

「ローマ法王の謁見」のきっかけが、

「焼き場に立つ少年」の写真を

ローマ法王が配布している、という話を聞

いたから、、という、、。

 

えっ!まじですか?と思いました。

その動機から謁見実現まで、

だれが想像できるでしょうか?

しかも、それを実現するために行動する

メンバーが世界各地にいる、、。

 

“何ごとも、否定されてからが実現の始まり

なんです”という住職の言葉通りに、

ふと思いついたことでも、純粋に願い続け、

行動し続けることで、本当に現実にしていく

アースキャラバン!

 

一体、次はどうなっていくのでしょう!!?

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