住職に聴く!2019年3月号

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤喨及 東京生まれ。少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職の他、タオ指圧/気心道創始者、作曲&演奏家、海外支援や平和活動を行うNPOアースキャラバン代表、ゲームCHATRANGA考案者等、多才な活動で知られている。   

90年の初頭から現在に至るまで、北米各地、ヨーロッパ各地、中東(イスラエル、パレスチナ)、オセアニアなど世界各地でタオ指圧、気心道、また仏教ワークショップを行っている。      

またその足跡によって、世界10カ所にタオサンガが生まれ、各センターで、タオ指圧の施術と指導や念佛修行、海外支援活動などが行われている。                                  

遠藤喨及個人ページ http://endo-ryokyu.com/

 

音楽は人を健康にする

 

ーー 前号では、人々の霊的な飢えを満た

、“健康的な修行システム”についてのお

話しを聞きました。

住職は、これまでと違う音楽法要の念佛修

を世界で始められるとのことですが、

それらと関係あるのでしょうか?

 

 住職: 一般に修行の目的って何でしょう?

心が統一し、瞑想状態になり、無我になるこ

と。

あるいは、宗教的な恍惚感に浸ったり、

様々な非日常的、あるいは神秘体験を得る

こと。

そしてそれらの結果、人生の苦悩や心の不

自由から解放されること。

さらに、慈悲深くなり、智慧が高まること等

々ではないかと思います。

 

ーー はい。

 

住職: 何にせよ、修行においては、心が定

まって落ちつき、心が集中することが前提と

なります。

では、そのためには何をどうしたら良いのか

2千年ぐらい前に始まった大乗仏教(あるい

はその影響のもとに生まれたキリスト教)で

は、マントラを繰り返し唱え、仏(またはキ

リスト)を念じ祈る、ということが行われて

来たのです。

 

ーー 念仏の始まりも、そこだったんですね。

 

住職: 大乗仏教は仏塔崇拝が始まりである

ことは歴史的な事実です。

仏を思慕し、マントラを唱えながら、

仏塔を周ったのです。

大乗経典の内容も、これに沿っています。

僕は、現代の人がそのような行為を最大限

に効果的に行えるようにするにはどうすれば

良いのか、をずっと考えて来たんです。

 

ーー はい、、。

 

住職: そして、最後にたどり着いたのが、

“すべてを一定のリズムで音楽的に行うこ

と”でした。

行は、一定のリズムで行われば行われるほ

ど効果的だし、音楽的に美しく、また癒され

るようなものであればあるほど良いのです。

 

ーーどうしてですか?

 

住職: 人の魂が、煩わしい日常を離れ、

浄土という異界に入り易くなるからです。

また、それによって心身は癒され、苦しみを

離れて、より健康的になるからです。

 

ーー なるほど、それで音楽法要の修行に

ったんですね。

 

住職: 現代は、すべてが商業主義になって

しまって、音楽ですら消費の対象です。

でも本来音楽は、神さまに捧げ、心を異界に

遊ばせるものです。

音楽は、神仏と融合し、霊的な飢えを満たす

宗教的な行為なのです。

 

ーー 本来、音楽というのは、住職のおっ

しゃるように宗教的な行為であったはずで

すね。

 

住職: 古代のギリシアでは、病気の治療に

音楽を使っていたそうです。

 

ーー 音楽には治癒力があることは聞いた

とがあります。

 

住職: 最近、それを証明するような研究が

発表されました。

 

ーー そうですか。

 

住職: 「音楽をすることで人間は健康的で

幸福になれる」という研究結果を、イギリス

の音楽系チャリティー団体「Music For All」

が発表したんです。

 

ーー へぇー、

そういう研究をする団体があるんですね!

 

住職: 音楽制作や演奏をすることで、高齢

者は身体的な健康の悪化を減少させること

ができる。

ピアノ演奏はキビキビ歩くのと同じ程度、

心臓を動かす運動になるとのことです。

 

ーー すごいですねー! 

希望が持てます!!

 

住職: 音楽制作は脳の発達を促し、

楽器演奏の練習は脳内の灰白質に影響を

与えるそうです。

だから、子供の頃から楽器の演奏をしたら、

記憶力、言語能力、また注意力が増して、

知的な成人への成長を促すことにつながる、

と。

 

ーー わかる気がします。

 

住職: オーストラリアのディーキン大学

も、音楽に関する研究結果を発表しました。

それによると、音楽に関わることは人間に幸

福感をもたらし、長生きさせるそうです。

“音楽が不安とストレスレベルを最大で

65%まで軽減する”という研究結果が出

ているんです。

 

ーー 65%って、すごいですね。

純粋に音楽にふれるというのはすばらしい

ことなんですね。

 

住職: 人々が修行の目的を最大限に達し

やすい方法を考えて来ました。

健康的に修行できる方法をずっと模索して

来たんです。

その結果、行き着いたのが音楽だった。

そうしたら、こんな研究発表が各地で為され

ていた。僕はこれを読んだとき、

“ああ、自分の方向性は間違っていなかった

んだな”と思いました。

 

ーー お経のすべてを音楽的に行うことが、

健康的な修行になるんですね。

 

住職: この「健康的な修行」という言葉

を、僕はもともとは別の意味で使っていま

した。

 

ーーどういう意味だったんですか?

 

住職: 人々がスピ系のナルシズムやカルト

的なグループ意識に陥らないこと。

また、因習が染み付いた“こうるさい”

伝統宗教の垢にも染まらないことです。

 

ーー そうだったんですか、、、。

 

住職: でも、修行内容のすべてが音楽的に

なった結果、「健康的」の意味がさらにふく

らみました。

 

ーー どういう風にですか?

 

道場がバンドになれば良い

 

住職: 今や、和田タオサンガ道場の念仏

修行に参加するということは、「音楽の演奏

に参加する」ようなものになった。

これは、言ってみれば、“バンドに入る”

ようなものです。

 

ーー なるほど。

 

住職: そうなると道場にいる人のスタンス

には、2つしかありません。

 

ーー というと?

 

 住職: ”ステージに立って演奏している

メンバー”か、あるいは”客席側に座って

演奏を聴いているお客様”か、です。

 

 ーー どういうことですか?

 

住職: 例えば、ステージで演奏している

ミュージシャンって、客席を盛り上げてこ

そ、ミュージシャンとしての存在価値が

あるわけでしょう。

 

ーー そうですね。

ュージシャンには、お客さんを盛り上げる

勤めがありますものね。

お客さんに盛り上げてもらおうと思って

待っているバンドなんて、ちょっとあり得

ないですし。

 

住職: だから、バンド・メンバーとして、

道場(客席)を盛り上げているのか?

それともメンバーに盛り上げてもらうのを待

ち、シーンと黙って座っているお客様なの

か?

道場に関わっている参加者の無意識のスタ

ンスが明確になるんです。

 

ーー ああ、なるほど。

たしかに、盛り上げてもらうのを待って、

ステージの上で、シーンと押し黙っている

メンバーがいたら怖いですしね。

 

住職: お客様の中には、バンドに合わせ

て、客席で一緒にペンライトをふっている

コアなファン。

また、客席の後ろで、バンドを品定めして

いる「消費者」というスタンスもありますけ

どね。(笑)

 

ーー あはは!って、

笑い事じゃないですよね、

それで本人が、バンドメンバーのつもりだっ

たら、ちょっと怖いし、、、。

 

住職: 今まではすべてが不明瞭でした。

誰がメンバーで誰が長年のお客様なのか分

からない。

本人がそう思っているんだから、こっちも

そう思わなければ失礼だ、と思っていた

から。

ただ、お客様は場に責任を持たない。

そして無意識に責任を持つ人にぶらさがる。

ぶらさがられた人が我慢することで、

何とか成り立ってきたんです。

 

ーー 誰かが我慢することで成り立っている

人間関係は、健康的ではないですね。

本人はメンバーのつもりでも、メンタリティ

や行動は”お客様”というのではしんどいです

よね。

 

住職: 何ごとも、ものごとを解決するには

事実を明らかにしなくてはなりません。

修行が音楽的になり、道場がバンドになるこ

とで、事実がはっきりするんです。

正直僕には、“ああ、これで助かった!”とい

う想いがあります。

 

ーー そうなんですか、、、。

 

住職: バンドのメンバーが相手だったら、

“てめー、何やってんだよ。

盛り上げないなんて、そんなのロックじゃね

えよ!”なんてことも、平気で言えるはずなん

です。

でも、それはお客様相手に口にすべき事で

はないですよね。

傷ついてしまうかも知れないし、被害者感情

を抱かれるかも知れない。

もう、来なくなってしまうかも知れない。

実際、そんな人は多かったから、参加者は

皆、お客様として大切に扱う、というスタン

スで僕はやって来たんです。

 

ーー それは、大変でしたね。

 

 住職: 人を大切に扱うことは全く苦ではあ

りません。

ただ誰を、厳しい練習に取り組む、同じバン

ドのメンバーとして扱い、誰を長年のお客様

として丁重に扱うべきなのかが、よく分から

なかったんです。

でも、バンドになれば、各自のスタンスや

人間関係がはっきりするから助かるんです。

 

ーー はい。

 

住職: お客様なら、場を盛り上げてもらわ

なくて良いですし、こちらもお客様に対し

て、“場を盛り上げて下さいね”なんて、

見るたびに気を使いながら言わなくても

良い。

あとは本人は、ご自分のスタンスなり

立ち位置を認識さえして下されば、僕も少し

は楽になれると思います。

 

ーー 今まで、大変だったんですね。

 

住職: 大変だったのは、各自のスタンスの

自己認識と、実際のスタンスとのズレなんで

す。

自己の認識と実際のスタンスが一致してい

れば、メンバーであろうとお客様であろう

と、どちらでも良いのです。

もっともお客様だけだったら、念仏修行の道

場を継続していくことは、もう難しいと思い

ますが、、、。

 

ーー えっ、そうなんですか、、、!? 

 

住職: それは、客席にいるお客様だけで

メンバーがいなければ、バンドはできない

ですからね。

まあ、ソロでやって行くしかないわけです。

もともとは一人でやっていたのですから。

 

ーー はい、、、。

 

住職: いずれにしても音には人の生き様が

そのまま現れるから、ごまかしがきかない。

道場がバンドになることによって、各自の生

き方もスタンスも明確になる。

その上、真剣にやればやるほど音楽は心身

を健康的にするから、音楽ってやっぱり良い

な、と思いますね。

 

インタビュー後記


ほんとうに健康的な人間関係が成立するとい

うのは、奇跡に近いんじゃないかと思いま

す。

 

もらう一方の人と与える一方の人。

そんな人間関係はどこか不健康だ、と感じて

はいても、とりあえず、世間的には(?)

それは本人たちがよければ問題ないという

ことになっているので、それ以上の追求は、

できません。

 

そのような構図を、念佛修行の道場に置きか

えて考えると、、、。

これまでの住職の苦悩が、さぞ大きなものだ

ったに違いない、と容易に想像できます。

“もう止めてしまおうか”、という言葉が、

何度も頭をよぎった事でしょう。

あたかも簿氷を踏むような思いでやってこら

れたのではないでしょうか、、、。

 

修行者の“はず”の人が、実際にはお客様

メンタリティのまま道場に居続ける。

これは、どう考えても健全ではありません。

お客様メンタリティに陥る原因は、エゴを

満足させるところにあるのでしょうから。

 

それが、とうとう住職をして、“お客様だけだ

ったら、念仏修行の道場を継続していくこと

は、もう難しいと思う”と言わせてしまったの

でしょう。

 

音楽することは、心身だけではなく、人間関

係のスタンスも健康的にする。

「道場はバンドなんだ」と定義した住職。

その斬新な考えに驚きました。

 

おそらくその根本には、“修行に参加するな

ら、あなたも、世界に喜びをもたらす人に

なってほしい”という切なる願いがあるの

でしょう。

 

タオサンガという、この世界1ユニークな仏

教の道場は、果たして今後も存続するので

しょうか?

それとも、「かつて、純粋な願いを抱いた

一人の僧侶が、サンガを創ろうとしたことが

あった」という、過去の物語で終わるので

しょうか?

 

これからの道場の参加者が、これまでの

ように”お客様化”することなくバンドメン

バーになり、道場が存続できたとしたら、

それは、住職の切なる願いが、

理屈をこえて、世界の人々の心の奥に

届いたということだ、とは思うけれど、、、。