チャンドラボーズ記念館で
ーー 前回、インド仏教の最高指導者・
佐々井上人との出会いについてお話を
伺いました。
その奇跡的な出会いには、驚きました!
住職: はい! 僕も驚きました。
ーー また、佐々井上人が「希望の火」へ
祈りを込めて下さったときの話は、
とても印象的でした。
住職: どういう点でしょうか?
ーー そうですね。
住職の「佐々井上人が、希望の火の本質を
的確に捉えておられることに驚いた」
という所ですね。
住職: なるほど。
ーー 具体的には、どういう意味なのでしょうか?
住職: 佐々井上人の言葉の中に、
以下があります。
どうかこの希望の火が、
全世界の民の「希望の火」となって、 世界平和に貢献して、 行くであろうことを信じて…… |
住職: これは、まさしく「希望の火」
活動メンバーの心 、そのものを表現して
いる、と思ったのです。
ーー なるほど、「人類が融合すること
で、世界が平和になる」と信じる人が、
活動に賛同するということなのですね。
住職: だから、佐々井上人も、
喜んで希望の火に祈りを込めて、
メッセージを下さったのだと思います。
ーー 佐々井上人は、詳しい説明を
受けなくても、すっと希望の火の本質を
掴んで、賛同されたのですね。
住職: そこは流石だと感嘆しました。
ーー はい。
住職: 法華経に、
「質直柔軟(しつじき・にゅうなん)」
という言葉があるんです。
ーー どういう意味ですか?
住職: ”素直で心が柔軟である”という
意味です。
ーー へぇー。
住職: 佐々井上人は、まさにこの
「質直柔軟(しつじき・にゅうなん)」を
地でいっているんだな、と思いました。
ーー なるほど。
住職: たしか道元禅師も、
「中国で何を学んだのか?」と聞かれて、
一言、「柔軟心(にゅうなんしん)」と
答えられていたと思いますよ。
ーー 心が固っていないことは、
それほど大事なことなんですね。
住職: 心が解放されるには、
「質直柔軟(しつじき・にゅうなん)」
であることが必要です。
ーー はい。
住職: それに、素直だと人生で得することが
いっぱいありますしね。
ーー ヘェ〜!
その話も詳しく聞きたいところですが……
ところでナグプールで佐々井上人と
会ったあとは、どこへ向かったのですか?
住職: 最終地のコルコタです。
ーー どのような目的があったの
ですか?
住職: 3つあったんですが、
その1つはチャンドラボースの
子孫に会うことでした。
ーー チャンドラボースって?
初めて聞きましたが、、。
住職: インド独立の英雄です。
チャンドラボースがいなかったら、
インドの独立は難しかった、
とさえ言われています。
ビハール州では、チャンドラボースの
生誕日は休日です。
この日は、街をあげての
お祭りになりますよ。
ーー そうなんですか!
日本では、あまり有名ではないですね。
インド独立と聞けば、
ガンジーがまず頭に浮かびます。
住職: チャンドラボースのお墓は、
東京の杉並区のお寺にあるんですよ。
<蓮光寺 東京・杉並区>
ーー え〜!
それはまたどういう訳でしょうか?
全然知らなかったです……。
住職: 戦争前から、
インド独立の闘士たちは、
日本に亡命していました。
日本人のお金持ちたちが、
彼らを密かに匿っていたんですね。
チャンドラボーズも、その内の一人です。
ーー そうだったんですか……。
まったく知りませんでした。
住職: やがて戦争が始まり、
各地で闘った英軍の捕虜が、
シンガポールに送られました。
チャンドラボーズは、
インド人兵士たちに、
「独立インド義勇軍への参加」を
呼びかけました。
ーー インド独立戦争を先導したのですね。
住職: そして、それに応じた
インド人兵士たちで、
部隊を編成し、司令官を務めました。
また、ビルマにインド亡命政府を樹立
して、大統領(自由インド仮政府国家主席)
にもなりました。
<世界に先駆けて、女性兵士たちも受け入れた>
ーー すごいですね!
住職: その後、日本軍がビルマから
インドに向かって進撃するインパール作戦に、
独立インド義勇軍(インド国民軍)の
司令官として、前線に立って参戦しました。
ーー それで、どうなったのですか?
住職: インパール作戦は、
大戦末期に発動された、
無謀な作戦です。
日印軍も頑強に戦ったのですが、
ロクな補給も受けられず、
敗退しました。
ーー そうだったんですか…….
住職: 終戦直後、チャンドラボーズは、
亡命しようと、台北から日本軍機に乗りました。
それが、離陸直後に墜落して重傷を負い、
数日後に亡くなったのです。
亡くなる時には、「インドは自由になるだろう。
そして永遠に自由だ」と言い、
天皇への伝言も頼んだそうです。
ーー 日本と深い縁があった方だった
のですね。
それにしても、
そのような最期だったとは……。
住職: チャンドラボーズは、
常に自分の身を犠牲にして、
インド独立のために闘い抜きました。
その強烈な精神は、インド人の心を
奮い立たせたのです。
ーー そうですか!
住職: インドが独立できるかどうか
という、そのさ中、
「チャンドラボーズに続け!」と
民衆が立ち上がったのです。
インド各地で激しい抗議活動が
始まりました。
ーー へぇー!
住職: イギリスへの抗議活動は、
火のようにインド全土に燃え広がり、
手がつけらないほどになりました。
そして、とうとうイギリスも、
民衆の力に屈服して、
独立を認めざるを得なくなったのです。
ーー インドの民衆に、
すごい勇気を与えたんですね!!
住職: チャンドラボーズのことを
考えると、一人の人間の精神の力の
偉大さをまざまざと感じます。
ーー そのご子孫の方とは、
どのように会うことができたのですか?
住職: 奇跡的に会えたのです。
ーー なんだか、
聞く前から、驚いています(笑)
住職: 会ったのは、
チャンドラボーズの甥の息子さんたち
2人なんです。
その甥は、チャンドラボーズを
亡命させる時に、
重要な役割を果たした人です。
ーー そうなんですか。
住職: 独立運動をしている
チャンドラボーズの家は、
常にイギリス官憲に取り囲まれ、
監視されていました。
ーー まあそうでしょうねぇ…..
住職: 深夜にそのスキをついて脱出し、
甥が運転する車で変装した
チャンドラボーズは、
列車に乗ったのです。
その後、チャンドラボーズは、
陸路でヨーロッパまで抜けたのです。
ーー すごい話ですねぇ……..。
その甥の息子さん二人と
「奇跡的に会えた」というのは?
住職: まず、2人とも、
インドに住んでいないんですね。
お兄さんは、ハーバード大学の教授で、
弟さんは、イギリスのやはりハイレベルな
大学の教授でして…….
ーー あれま!
住職: それで、「絶対に会えないよ」
なんて、地元のインド人に言われて
いたんです。
でも、能天気な僕ら(特に僕とアリス)は、
またしても「何とかなるでしょ」と、
チャンドラボーズ記念館に行き、
館長に面会したんです。
ーー ふふ、なるほど……
住職: それが、チャンドラボーズ生誕日
の前日だったんですね。
それで館長に会ったら、
「あと30分ぐらいしたら、
2人とも来るから、会えるよ」
なんて言われまして……..
ーー いやー!
何とも、すごい奇跡ですね!!
住職: お2人に会って、
希望の火に祈りを込めてもらい、
メッセージを頂きました。
それは、素晴らしいスピーチでした。
ーー そうですか!
お兄さんのスガタ・ボーズ(ハーバード大学教授)
弟さんのスマントラ・ボーズ(ロンドンの大学教授)
住職: 書籍などの記念品まで頂き、
また、色々楽しくお話しました。
ーー どんなお話をされたのですか?
住職: 盛り上がったのは、
「日本がシンガポールを占領した直後に、
インドに向かって進軍していれば、
その時に独立できたのにねぇ….」
なんていう、歴史の if (もしあの時、
ああしていれば,,,,,)的な話ですね。
ーー へぇ〜。
住職: 「だいたいヒトラーが、
チャンドラボーズを、宣伝のために
ドイツに引き止めていたのも良く
なかった。
もっと早く日本に向かっていればねぇ…..」
とかね。
ーー そんなことがあったんですね。
もし、そうなっていたら、、
ほんとうにどうなっていたのか、、。
住職: 「チャンドラボーズを
日本に運ぶため、ドイツの潜水艦と
日本の潜水艦が、インド洋でドッキング
した時もすごかった!」とかも。
ーー そんな歴史的な人物の子孫と、
歴史のif を楽しくお話しできるなんて、
すごいことですね!
住職: まったく「希望の火」の
おかげですよ。
そして、翌日のチャンドラボーズ生誕祭に、
「希望の火」を招いてくださいました。
僕ら一行は、特別招待状を頂き、
「希望の火」が、生誕祭の壇上に灯った
のです。
ーー それもすごい話ですね!
<チャンドラボース生誕記念祭の壇上に置かれた「希望の火」>
チャンドラボーズのBirth Day
特別イベント終了後には、
いくつかのメディアから取材受けました。
テレビニュース ☟
インタビュー後記
インド独立のために、闘い抜いた人、
チャンドラボーズのお話、
ほんとうに驚きました。
戦争前に、
インドから日本にインド独立の
闘士たちが亡命していたことなど、
これまで聞いたこともなかったので、
住職のお話に興奮しました。
「希望の火」の旅の話は、
驚きの連続です。
“えっ、住職、そんなこと、
本当にあるんですか?”
と何度聞いたことでしょうか。
インタビューのなかで、
住職は、「心が解放されるには、
「質直柔軟(しつじき・にゅうなん)」
であることが必要です。」
と話してくださいました。
法華経にある言葉で、
”素直で心が柔軟である”という意味
だそうです。
住職のお話を聞いていると、
自然に心が解放されていくように
感じるから、不思議です。
このインタビューの最後の方で、
”まったく「希望の火」のおかげですよ。”
と、住職は、おっしゃっています。
その気負いのない言葉を聞いて、
気持ちのよい自由な風がこころに
吹いていくのを感じ、感激しました。
インドの旅,、次回もお楽しみに!