和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。
喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?
遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。
http://endo-ryokyu.com/blog/
ア―スキャラバン2017中東篇
-- 2015年、住職が呼びかけ人となってはじまった「アースキャラバン」は、毎年中東の地を訪れていますが、今年はどのような旅でしたか?
住職: 参加頂された方にとっては、まるで人生何年か分ぐらいを凝縮したような、とても充実した時間ではなかったかな、と思います。少なくとも僕はそうでしたね(笑)。あと、個人的な感想を言えば、パレスチナの村で行った泥まみれの井戸の浄化作業や、道路補修の土方作業などが、僕的には一番楽しかったですね。
-- アースキャラバン一行の30人でされたのですか?
住職: 井戸の浄化作業は、イスラエル活動家のガイやヨシやパレスチナ人たちと一緒に行いました。道路作業修復は、パレスチナの村人たちだけでなく、アメリカから来ていたキリスト教のグループとも一緒に行いました。イスラエル人、海外からの支援者たち、パレスチナ人などとみんなで一緒にできたのも良かったですね。
-- アースキャラバン中東って、そんなこともするんですか?
住職: 難民キャンプの子供たちと遊ぶこともそうでしたけど、みんなと一緒に額に汗を流す活動は、ただ話を聞くよりも楽しいですよ。何よりも、中東を一番、実感できる方法でした。何と言っても、「みんなで一緒に役に立った感」には、喜びがありましたね。
-- なぜ、道路を補修の手伝いだったのですか?
住職: ちょっとややこしいのですが、パレスチナのC地区は、イスラエル占領政府によって完全支配されていて、パレスチナ人は家を建てることすら許されていないんです。
-- でも、昔からそこに住んでいたのは、パレスチナ人なわけですよね。
住職: はい。彼らは400年前の土地の権利書も持っています。しかし、そこに家を建てることをイスラエル政府によって禁じられています。パレスチナ人が家を建てると、イスラエル軍がブルドーザーでやって来て破壊するんです。
-- 一体またどうしてなんですか?
住職: パレスチナ人が住めないように追い出していくのがイスラエルの占領政策
なんですね。
-- 追い出してどうするのですか?
住職: その土地に極右のイスラエル人入植者を住まわせて行きます。だからまず、パレスチナ内にイスラエル人のための近代的な入植地を造って行くんですよ。
-- 「パレスチナが土地を奪われている」というのはそういうことだったんですね。
住職: パレスチナの土地に違法に入植地を作って、イスラエル人を住まわせる。同時にパレスチナ人が生存できないように家屋を破壊し、水源を取り上げ、インフラを破壊する、という戦略です。
-- 、、、。
住職: それによって、パレスチナの土地からパレスチナ人が難民となってどこかへ消えて行く。そうなれば民族浄化が成立し、イスラエル政府としては領土が拡大するので、万々歳なわけですよ。
-- 何とかならないのですか?
住職: もちろん国際法に違反していますし、ハーグ国際法廷でも「イスラエルの入植地は違法」との判決が出ています。しかしそれには強制力がありません。
-- 国連は無力なんですね。
住職: 世界のほとんどの国がパレスチナの独立を承認しています。しかし、アメリカが拒否権を発動してパレスチナの独立を阻んでいる上、年間100億ドルの支援をイスラエルにしています。
-- どうしてですか?
住職: 軍産複合体が雇っているイスラエル・ロビーの力ですね。
-- うーん、、、。
住職: またCNNなどの主要メディアは、パレスチナの実態を報道しません。それどころか逆に、「パレスチナ人はテロリストであり、イスラエルは犠牲者である」という外聞を広めています。
-- なぜですか?
住職: 本当のことを伝えたら、当然、国際世論ではイスラエルへの非難が高まります。そして「パレスチナを独立させよ!」「パレスチナ人を救え」ということになりますよね。
-- はい。
住職: すると、イスラエル政府も自国民を洗脳(「パレスチナ人はテロリスト。だからパレスチナ占領を続けなければ、イスラエル国民が危険にさらされる」)できなくなります。
-- そうなるとイスラエルは困るんですか?
住職: パレスチナ人を追い出して、入植地を拡大し、イスラエルの領土を広げるという政策が不可能になりますからね。
-- 入植地を拡大して、パレスチナ人を追い出して、ユダヤ人だけが住む領土を拡大する。それが目的ですか? それでイスラエル国民がハッピーになると、、?
住職: そもそも、そうやって建国されたのがイスラエルなんです。
-- そうなんですか?
住職: パレスチナ人の村の家屋や井戸、畑や家畜などをすべて破壊し、人が誰も住めない状態にして70万以上を難民して建国したのです。
-- ああ、、、。
住職: その後、ヨーロッパなど世界各地から「人がいない土地だから」と聞かされてやって来た、白人ユダヤ系(アシュケナージ)の人間たちを住まわせて行ったのです。それが建国後から現在に至るまでずっと続いてる、というのが現状です。
※現在のパレスチナ人難民数は500万人(世界最大)
-- 残酷な現実ですね。それにしても、どうして主要メデイアが現実を報道しないのですか? 報道というのは正確なものでなければならないはずですが、、、。
住職: メディアは株式会社ですから、株主が自由に口を出すことができます。編集長だってサラリーマンです。たとえ記者が書いても、上からの圧力がかかれば、ボツにすることができるでしょう、、、。政治家にしても同じです。企業献金による選挙活動で当選していれば、献金した企業に有利な法案を通すでしょう。
-- でも、、、。
住職: 一般の人は「有名な主要メディアが言っていることだから真実なんだろう」、「政府が(政治家が)言っているのだから間違いないだろう」と思います。さらに、「みんながそう言っていることだから、本当のことなんだろう」とも思うわけです。そしてそれらに意義を唱える人は、「それって陰謀論でしょ」と言われます。
-- そうですね、、、。
住職: 権威や常識が、人が真実を見る目を曇らせるんです。メディアの株主が誰だかを調べたら、スポンサーが誰なのかを調べたら、世界の裏で何がどう動いているのかは、段々わかって来るはずです。それによって浮かび上がってくるのは、陰謀論でもなんでもない。一般には隠されている、世界の真実の姿なんです。
--はい、、、。
住職: 報道はウソだ、と聞いてはいても現場に行くまでは、なかなか信じられないものです。それに現地に行かないと、感情の部分まで共感して理解することはできません。
--そうですね。
住職: 文字や映像だけでは、“ そこに生活しているパレスチナ人ひとりひとりの悲しみ苦しみ、そして希望があるんだ”、という”実感”まではわかりません。僕も、ただ本で読んだだけの時は、パレスチナ人の苦難を、ただ知識として理解しただけでした。実感としては全くわからなかった、というのが正直な所です。
-- はい、、。
住職: 現地に行って初めて、ブルドーザーによって自分が住んでいる家が破壊される苦しみ、イスラエル兵に催涙弾を撃たれる恐怖、子供達の未来に対する希望などが、感情的共感をもって理解できるようになったんです。
-- それは、本を読むだけではわからないものでしょうね、、。
住職: 今回の道路修復は、砂利を敷いたのですが、全員がシャベルなどの手作業です。シャベルカーなどの機械は一切使えません。
--なぜですか?
住職: 車を使って道路を修復したら、イスラエル警察に逮捕されるからです。
-- えー!? 逮捕されるんですか?
住職: そのすぐ目の前にあるイスラエルの近代的な入植地は、シャベルカー、ブルドーザーなどの機械を使ってできていますけど。
-- それは嫌がらせですか? なんというか、、人が苦しんでいるのを見て喜んでいるんでしょうか?
住職: 目的そのものは、嫌がらせとか人が苦しむのを見て喜ぶとかの「感情的なこと」ではありません。もちろん非人間的で不道徳なことですが。「パレスチナの土地からパレスチナ人を出て行かせる」のが目的です。
-- なるほど。
住職: こういうことは、こちらが感情的になると理解できなくなります。パレスチナに、なるべくパレスチナ人が住めなくなるようにするのが、イスラエルの占領政策。だからパレスチナ人に生活向上されるのは困る。そこで、インフラの破壊などを行っているのです。
-- そこに共存という考えはないんですね、、。
住職: イスラエル政府は国民に、「パレスチナ人は悪魔のようなテロリスト連中。彼らはユダヤ人を皆殺しにしたがっている」と吹き込み、入植者たちにもそう思い込ませています。入植者は特に、その洗脳が強いと思います。ユダヤ人の被害感情を煽り、「パレスチナ人たちをやっつけないと自分たちがやられる」という恐怖を植えつけているのではないかと思います。
-- なぜそう思われたのですか?
住職: 入植者たちの行為があまりにも常軌を逸しているからです。
-- どんな行為なのですか?。
住職: 例えば、農作業しているパレスチナ人のおばさんを棒でめった打ちにしたり、集団通学している小学生たちを襲ったりします。
-- 普通の精神状態ではありえないことですね、、。
住職: このため、小学生の通学を守るというキリスト教の団体があるぐらいなんです。羊飼いも暴力に晒されています。羊をたくさん殺されたりもします。オリーブの樹を切られたり、農作物を燃やされたりなど、入植者たちによる村人の精神的・物的被害は並大抵の量ではありません。
-- いつも暴力にさらされている、、。
住職: つい一、二年前にも、赤ちゃんを含むパレスチナ人家族が、入植者に生きたまま焼かれました。また、14歳のパレスチナ人少年がガソリンを飲まされて焼かれたこともあります。
-- 、、、。
住職: でもこれによって憎しみを煽られたら、負けなんです。パレスチナのC地区に。テント・オブ・ネーションというところがあるんですが、そこのキリスト教徒のおじさんのモットーは、「誰も憎まないこと」なんです。だから、たとえ入植者たちが、農業を教えて欲しい、と言って来ても、教えて上げたりしているそうです。
-- いやー、、、すごい話を聞きました、、。ところで、今回アースキャラバンが行った井戸の浄化作業というのは?
住職: イスラエルは、パレスチナの土地の水源を抑え、その水を自分たちでふんだんに使う一方で、パレスチナ人には通常の5倍の値段で売ります。イスラエルの入植地には、芝生で水をまいているところもあるぐらいですが、パレスチナ人には、WHOの基準に満たない量の水しか供給されていません。
-- そんなことが、、。
住職: それどころか、パレスチナの多くの井戸は、イスラエル軍によって破壊されています。中東のような暑いところでの水不足は死活問題です。だから飲めないまでも、少しでも水が農業や牧畜などに使えるように、泉の泥を取って使えるようにするのです。
-- 決して屈しないんですね!
住職: ただし、ここでも、イスラエル軍がポンプを破壊するなどの行為に出ます。パレスチナの人々は、果たして非暴力的抵抗運動を続けていくのか?それともあきらめて逃げるのか? という二者択一を常に迫られているのです。
-- 苦難の道ですね、、。
住職: 今回、この道路修復作業や、井戸浄化プロジェクトをコーディネートしてくれたのは、イスラエル人活動家のガイという人でした。実は僕、7年前、初めてパレスチナ側に入った時からずっと、イスラエル側にいる「本物」の人権活動家と繋がって一緒にやっていくことを熱望していたんです。それでアースキャラバン3年目にして、初めてそれが実現
したのです。
-- イスラエルにも本物の人権活動家がいるというのを聞くと、ホッとしますね。
住職: はい
-- 今日伺った話と、一般に言われている「イスラエルとパレスチナの対立」とか、「紛争」とか、「宗教対立」っていうのは、随分イメージが違うと思ったのですが、、、。
住職: 先ほど「CNNなどの主要メディアが、“パレスチナ人はテロリストである”という外聞を広めている」と言いました。そもそも、われわれ(国際世論)を誤魔化すために使われている言葉が、「紛争」であり「宗教対立」であり、「中東和平」なんです。
-- そうなんですか?
住職: 紛争や対立と言えば、“イスラエルとパレスチナが衝突して対立しているんだから、お互いの問題であって、他国が立ち入るべき問題ではない”というイメージになりますからね。
-- 巧妙ですね。紛争や対立という言葉によって、知らず知らず間違ったイメージが刷り込まれているんですね。
住職: さらに「イスラエルとパレスチナ間の平和」という言葉を使っていれば、いかにも対等な関係にある国家同士が戦争しているような錯覚にも陥ります。
-- 騙されますよね。
住職: 言葉って、使い方一つで、人の認識を誤魔化す道具になり得るんですよ。
-- 「パレスチナ問題」に住職が感じていることをお聞かせいただけますか?
住職: パレスチナは、メディアの嘘、歴史の嘘、常識の嘘などが如実にわかるという点では、恰好の所のような気がします。
-- 世界の真実の姿が知りたければ、パレスチナに行って活動するのが一番手っ取り早いということですね。
住職: 面白いのは、昔から世界が信じ込んでいる常識の嘘のひとつが、
はっきり見えることです。
-- それって一体、何ですか?
住職: 次にしませんか?(笑)
※住職に聴く!ア―スキャラバン篇(1)(2)・・ア―スキャラバンがパレスチナに
行くきっかけになったのは?のインタビュー。
https://taosangha.com/jushoku-commentaries/earth_caravan1/
https://taosangha.com/jushoku-commentaries/earth_caravan2/
インタビュー後記:
パレスチナの地にもともと暮らしていた人たちを、圧倒的な武力と暴力で追い出し(攻撃し)、自分たちの入植地を増やす。 それにしても、追い出してパレスチナ人がひとりもいないパレスチナがイスラエル国になることが、本当にイスラエルの目的なのだろうか、、?
そして、パレスチナの人たち、、、。 彼らはなぜ非暴力的抵抗運動を続けられるのだろう? 希望があるからなのだろうか? 信仰心が深いからだろうか、、?
住職の話を聴いて、アースキャラバンが毎年中東を訪れていることは、とても意味のある事だと感じました。
パレスチナにとっても、イスラエルにとってもアースキャラバンとの出会いは、いまはまだその変化は見えなくても、ひょっとして大きなものではないかと、歴史的瞬間に立ち会っている気持ちになりました。「一番面白いのは、昔から世界が信じ込んでいる常識の嘘のひとつが、はっきりわかる」って、いったい何でしょうね?
次回はぜひ伺いたいと思います。