和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。
喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?
遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。 http://endo-ryokyu.com/blog/
第九回
--前回は、アースキャラバンを実行していく過程での奇跡的な出会いや、中東ベツレヘムでのフェスティバルについて伺ってきました。
住職:はい。
--住職は、アースキャラバンはパレスチナが解放されるまで続けるとおっしゃっていましたが、それだけのパレスチナに対する強い気持ちというのは、どこから出てくるのですか?単に一時的な個人的な感情で動かれているとは思えないので、質問させていただきました。
住職:いやー、口から出まかせですよ。
--えっ!?
住職:パレスチナの人権団体の人たちに会って、アースキャラバンの話を持ちかけたら、「これまで海外の人たちとイベントやって来たけど、いつも単発で、終われば彼らは国に帰り、僕らの状況は何も変わらない。だから、あまり気乗りしない、、、」と言われたもんだから、ついね。「アースキャラバンは、パレスチナが解放されるまでやる。だから一緒にやろう!」なんて言っちゃって、ははは。
--、、、汗。
住職:というわけなんですが、まあよく考えてみたら、パレスチナ民衆の苦しみが、常に自分の胸の中に痛みとしてあるのも事実です。理由はわかりません。彼らの苦しみを想うと胸が痛くてなりません。パレスチナ問題とか中東平和に首突っ込んでいる人なんて、みんなそうじゃないですか? 来年のアースキャラバン東京実行委員長になったニッキーさん※も含めて。
※ニッキー 松本(ミュージシャン、平和活動家)
1981年に渡米、LAにてGargoyle, Negro East らのロックバンドで活動し、帰国後は作詞/作曲家として幅広く活躍する。自ら率いる「Rock Of Asia」では、アメリカツアーや中東ツアーを敢行。現地のマスコミで大々的に取り上げられる。中東問題に強い関心を持ち、様々な国の大使や外交官とも交流を持つ。
--そうなんですか。
住職:だと思いますね。それから、初めてエルサレムにいった時も何だか妙に懐かしくて、「昔ここ歩き回っていたのかなぁ」なんて思ったりもしました。あとは、「自分が一度口にした約束を守らないのは、恥ずべきことだ」というのが人生ポリシーとしてあるんです。約束を守るのは、人としてもっとも大切なことだから、「まあ言った以上はやりますよ」という、ただそれだけの話ですね。
--でも、言ってるだけの人って、多いと思いますが。
住職:人は人ですね。僕は人の服にはまったく興味がないんです。
服というのは、社会的地位とか、パスポートとか家系とか民族とか経済とか、障害があるとかないとか、、、。
でも心は見えない。僕に見えるのは、その人が自分の言葉にどう責任を取っているかだけです。僕にとっては、それが人としてのすべてなんです。
--はい。
住職:「人は人です」なんて言っちゃったけど、言葉に責任を取らない人に振り回されることが多いから、内心けっこう怒っているのかな? ははは。
--でも、わかりますよ。
住職:僕は、自分が思ったことを言葉にして、その言葉通りに生きているつもりです。そのためか、人が言うことは、つい本当だろうと思って言葉通りに鵜呑みにしてしまうんですね。それでアースキャラバンを創る過程でも、大変だったことがあります。でも僕は人とは利害ではなく、信頼でつながりたい、、、。
--住職と話していて、そのことをいつも感じます。
住職:そもそも教育って、信頼しないところには成立しないですよね。
誰かが、その人の可能性を100%信じて上げることで、人は伸びていくことができる。人に対する成長への願いの基本は、その人の可能性を100%信じることなんです。
--信じるんですね。
住職:だから、誰かが素晴らしい志を語り、「自分はこれをやる」と言えば、僕はそれを100%信じて支持します。それを全力で応援します。後でウソだとわかっても、疑いで人の可能性を積むよりは良いですよ。その人の一件は、まあ忘れれば済むことですし。
--来年のアースキャラバンの準備のため、今月からまたパレスチナに行かれるそうですね。
住職:これもまた同じなんですよ。/^ ^;) 今年の夏の中東で、ニッキーさんが、「11月中旬にまたパレスチナに行く」と言ったので、「じゃあ僕も、来年のアースキャラバンの準備に行こうかな」なんてつい言っちゃったんもんだから、、、。
--まったくニュースにはならないけど、今、パレスチナはとても厳しい状況で、毎日人が殺されているようですね。
住職:今日も、17才の女の子が検問所で殺されたそうです、、、。
パレスチナから届くFacebookでは、イスラエル軍に守られたユダヤ人入植者たちが、武器を持って、老若男女子どもを問わずパレスチナ人を襲っているそうです。「入植者たちは、人殺しがクセになっているのではないか?」なんて書いてありました。
--いのちに対する感覚が麻痺しているのでしょうかね。
(イスラエル側が張り巡らせた高さ8Mの防御壁のために、パレスチナ人たちは検問所を通り、時間をかけて大きく迂回しなくてはならない)
(手前はだれも住んでいないパレスチナ人の住居跡、向こう側はイスラエル入植者たちが居住している)
住職:あまりこんなことを口にしたくないんですが、夏にアースキャラバンで訪れた、比較的平穏だったところでも死者が出ているそうですから、今の状況はかなり悪いですね。
--それでも行かれるわけですね。
住職:逆に、そんな悪い状況だからこそ、人間性が浮き彫りになります。今、イスラエルでは、ユダヤ人とアラブ人が手をつないで合同でデモをするなどの活動も行われていますしね。
--今回はどのような予定で行かれるのですか?
住職:最初はウィーンのタオサンガセンターに寄って、久しぶりにワークショップをやります。1週間ほど滞在した後にテルアビブに行き、そこでもワークショップをやります。
--テルアビブでもされるんですね。
住職:かつて存在したイスラエルのタオサンガが散り散りバラバラになった後、何年も僕を信じていて待っていてくれた、かつての古い生徒さん数名で、再びイスラエル・タオサンガを再建しようとしているんですよ。
--へー!それはすごいです!
住職:その他、ベツレヘム、ヘブロン、ラマラなど、パレスチナ西岸の街に行き、アースキャラバン準備のためのミーティングをします。音楽ライブもやると思います
--ああ、そうなんですか! ニッキーさんとは現地で合流ですか?
住職:はい。今回はアースキャラバンの準備の他、貞子の鶴の映画作品「サダコの鶴 ~地球をつなぐ~」を創り、パレスチナでの上映場所を探していた、映画監督の増山麗奈さんとも現地で合流します。それから、パレスチナに平和の道を作るというプロジェクトを考えている、吉沢さん親子(お父さんとその息子さん)も同行するそうです。
--いろいろ行かれるんですね。映画監督の増山麗奈さんと言えば、ジャーナリストの志葉玲さんの奥さんですね。
住職:はい。夏のアースキャラバンで現地にいたときに、ヘブロンの劇場から「8月6日に広島をテーマにした劇をやるから来て欲しい」と言われたんです。それで、原爆の残り火を持って応援に行きました。そこの劇場に声をかけて、増山さんの映画を上映することになったんです。その他にもニッキーさんつながりで、ラマラでの上映も決まったそうです。
--それはすごいですね、楽しみですね!
住職:夏の話に戻りますが、広島の劇の上映のあと、子どもたちが口々に、日本を讃えていました。パレスチナの人たちは広島・長崎の原爆被害に対して、大きなシンパシーを持っているんです。
--それは、どうしてなのですか?
住職:パレスチナが未だにイスラエルの占領下にあるのは、国連の常任理事国であるアメリカが、パレスチナの独立を拒否するためです。その一方でアメリカは、毎年*30億ドルもの援助(軍事費を含む)をイスラエルに対して行っています。
*注・・・公式には30億ドルだが、実質360億ドルとも言われている。
--とても憤りを感じます、、。
住職:そしてイスラエルは、その武力でロクに武器を持たないパレスチナ(ガザ地区)を爆撃し、また地上を蹂躙しているのです。
--どうにかならないものかと、もどかしいですね。
住職:彼らにすれば、広島・長崎はアメリカによる原爆被害であり、そこから復興して世界的な経済成長をしたのが日本です。パレスチナ人たちは、日本の過去を現在のパレスチナに、そして日本の現在を未来のパレスチナに重ね合わせて観ているのです。、、、切ないです。
<インタビュー後記>
パレスチナの状況を見聞きするたびに、お金で解決できることではないことを思い知らされます。単純な利害関係ならこうはなっていないはずです。
また、このアースキャラバン篇のインタビューで住職が話されていたように、「宗教問題」でもないのだとしたら、、、。何ができるのか? は具体的な問いとなって返ってきます。
それにしても、、住職は面倒見がよいです。それは、知り合い関係だとか、利益があるからだとか、同じ国民だからだとか、そんなことは関係ないみたいです。
そして、いったんやるとなったら「ここまでやったのだから、仕方ないよ」と誰もがあきらめて言うことでも、「ここまで」って、「ここまで」のことでしょ? と、さらに深い底を指差されます。そこでようやく「そこまでいってはじめて“ここまで”と言えるのだ・・」と自覚する、そんなことがよくあります。
今回のインタビューで、住職は今月またパレスチナに行かれると聞きました。帰国後、お話を聞くのが楽しみです。