ーー 前回は、住職に、
インドと日本の歴史的な関わり、
特に、パール判事のお話や、
『戦争』はなぜ起こるのか?ということ、
『歴史』の欺瞞について、、
たくさんのお話をうかがいました。
インタビューの最後の、
「日本が戦争で失ったのは国土ではない。
日本が失った最大のものは真実である。」
という言葉も、戦後の日本、
私たちひとりひとりにグサッと
刺さるものだと感じました。
その失った真実を取り戻したい、、
とも思いました。
住職 : 真実を取り戻すには、
一人一人が、これから真実の歴史を
探求して行くしかないでしょうね。
ーー ところで、インドの巡礼は、
その後どうなったのでしょうか?
住職 : 今回のインドでは、
コルカタがゴールだったのですが、
ほぼ最後の日まで、支援すべき学校などを
巡っていましたね。
ーー どんな学校ですか?
住職: 例えば、赤線地帯の子供たちの
ための学童保育とか……
ーー というと?
住職: お母さんは、性的サービスの
労働者なんですね。
だから、親が仕事中に、
子供が家にいるわけにはいかない。
そのために子どもたちを世話している
NGOがあるんです。
ーー なるほど……..
住職: 何せ、アリス司令官もいるので、
皆さん、最後まですごい働きでしたね。
僕なんかもう最後は、電池切れで
この日なんか、休んでしまいましたよ。
学童保育の施設。スマートフォンを操作しているのがアリス。
ーー それで、全ての行程が
終了したわけですね。
住職: 最後の日まで何やかや、やりながらね。
でも、インドの旅は、終わってからが
始まりだったんですよ。
ーー えー? どういうことですか?
住職: 帰国後、ナグプールで会った
インドの仏教徒、アミットさんからの
猛烈なアプローチがあったんです。
それで…..
ーー どんなアプローチですか?
住職: 「もう僕は、離れ難い希望の火の
メンバーだ。」とか、
「ぜひ学びたい」とかのメッセージが、
もう毎日のように届きまして…….
アミットさん(中央)と「希望の火」インド巡礼メンバー
ーー すごい情熱ですね。
住職: はい、それで思ったんです。
アミットさんが住むナグプールに、
希望の火を常灯できないものか、
と…..。
何せ、ナグプールは、
毎年、数十万人が仏教徒に改宗する、
言わばインド仏教徒の聖地ですし……、
ーー あの佐々井上人(インド巡礼6)
のいらっしゃるナグプールに?
住職: 5月になってから、
アミットさんが腰痛で動けなくなる
という事態になったのです。
僕は、「走れメロス」の気分になって、
またインドに行ったんですね。
アミツトさんの腰痛治療と、
希望の火をインドのナグプールに常灯する、
というミッションを立てて。
*メロス・・・友情のために走り抜いた男性を描いた、太宰治の短編小説。
ーー えっ? またインドに?
住職: はい。
ーー それで、どうされたのですか?
住職: ブログに書いたんですが、
いくつかの寺や個人の住宅で、
法話やワークショップやったり、
アミットさんが連れて来た色々な人の
治療をしたりしていました。
この夜、無数の聖なる存在によって、人々の痛みは癒されていった
ーー そう言えば、佐々井上人が
日本全国を行脚した時、個人面談の会場が
京都のタオサンガ道場でしたね。
インドとの関わりが、
さらに大きくなって行ったんですね。
佐々井上人at 京都タオサンガ道場
住職: 希望の火を常灯するのは、
佐々井上人のお寺か、改宗会場が
良いのではないかと思いました。
その他、アミットさんが運営する、
貧しい子供たちの寄宿に常灯する、
というアイデアもありますが。
ーー なるほど。
住職 : 毎年の改宗式では、
その火で会場の「灯明」を灯せば、と。
ーー それが実現したら、
素晴らしいですね!
仏教徒改宗式が行われているナグプール
住職: そうこうする内に帰国後、
東京のダライ・ラマ事務所の
アリヤ代表から、
「12月にインドのブッダガヤで、
ダライ・ラマ法王が世界各地の
僧侶2000人を集めて行う
『仏教サンガフォーラム』があるから、
スピーチしませんか?」とお誘いを
受けたんです。
ーー えっ? つい最近ですね。
では、またインドに?
住職: でもまあ、
「僕はアカデミックなタイプでもないし、
そんなエライお坊さんたちの集まりに
行くなんて気づまりだしなぁ….。」
と思って、スルーしてたんですよ。
ーー あ、、、
何だか、らしいですね。
住職: ところが、です。
その話をアリスにチラッと
言ってしまったんですよ。
そうしたら例の
「RYOKYUさんは当然、行くわよね〜」
の空気感満載になってしまいまして……..
「希望の火が世界中のお坊さんたちと
繋がる最高のチャンスね!」という
アリスのニコニコ顔が、まるで電話口から
溢れているようでした……。.
ーー あはは!
住職: で、
「あれよあれよ、という間に」というか、
うぅ…とまるでヘビに睨まれた
カエルのように、
インドでスピーチすることが
決まってしまったのです。
ーー ふふふ。
いつものパターンですね。
住職: 覚悟を決めたのは
台湾から帰国してからです。
それで、僕がダライ・ラマ東京事務所の
アリヤ代表に伝えたんです。
「どうせするなら、誰も知らないことを
皆さんにシェアしたい。仏教の修行や
世界への祈りが、どれほど人の身体に
変化をもたらすのかを、実演で見せたい」
と……。
ーー すごいこと考えられますね。
住職: それだったら、
今までずっと海外でやって来たことでも
あるので、
「まあ、それぐらいなら、
自分にもできるのではないかな」
と……。
ーー いやー、でもそれって、
すごいことではないですか。
「サンガフォーラム」のポスター
住職: いざ、やることになったら、
もう大変ですよ。
スピーチ原稿を用意して、
英語がちゃんと伝わるように
練習する毎日です。
もう、結婚式のスピーチ頼まれたって
緊張するのに。
ーー え〜、
そうなんですか!
住職: その上、第6セッション4人の
パネルディスカッションの司会まで
仰せつかってしまいまして.,…..
ーー へぇ!!
住職: 先のアリヤ代表の話では、
「登壇する人を紹介してくれたら
良いから」みたいな話でした。
それで、これもまた
「まあそれぐらいなら、
僕でも何とかなるかな」と。
ーー 住職は、そんな、
ほのぼのしたスタンスで、
今回のことに臨まれているんですね〜
住職: どうせなら面白く登壇者を
紹介したいので、
事前にインタビューして、
「好きな食べ物は?」とか、
「坊さんになっていなかったら、
何になっていましたか?」とか、
どうでも良いことを聞き出して、
楽しい感じで紹介しようかな、
と思ってたんですけどね。
お坊さん相手だから、
「好みの女性は?」は、さすがに聞けないけど。
ーー ははは。アカデミックな場で
バラエティーっぽい司会なんて、
さぞ、驚かれることでしょうね。
住職: ところがです!
僕の目論見は見事に外れてしまったの
です。
というのは、現地の事務局長に、
「議長は、登壇者がスピーチを終えたら、
その概要を話して下さい。
その後、皆さんのディスカッションを
促してくださいね」なんて言われて
しまったのです。
ーー 結構、大変そうですね。
住職: 単なる司会だと思っていたら、
まさかの議長……。
もう、「ぎょえ〜!」ですよ。
”おいアリス、代わってくれい!”と、
思わず天を仰ぎましたね。
ーー ははは……って、
ご本人にしてみたら、
笑ってる場合じゃないんでしょうけど。
住職: マジな話をすると、
登壇するタイやチベットなどの
お坊さんたちは、日本の仏教用語なんか
で話してくれません。
当然、パーリ語やサンスクリット語です。
(…..涙)
ーー なるほど……..
住職: ずっと後になってから
ホームページ見たら、参加者に対して
「どちらの言語をお使いですか?」
という記入項目がありました。
何とそれが、
パーリ語かサンスクリット語を
選ぶんですよ。
ーー それは、緊張が高まりますね。
住職: 「アリヤ代表、そんなこと
言ってなかったぞ。こっちはどっちも
分からんもんね」と呟いてから
頭が空白になり、気絶しました。
ーー ”ははは”って、
また笑っちゃいけないんでしょうけど。
住職: せめて、あらかじめ
スピーチ原稿をもらって勉強して
おこうかと思ってお願いはしたものの、
果たして届くのはいつになるやら……..
せめて、パーリ語やサンスクリット語の
辞書を買って行こうかとは思っていますが。
ーーー ”ほのぼのスタンス”とはいえ、
準備のためには大変な努力が
必要なんですね。
住職: 先日やっと、
自分のスピーチ原稿をアリヤ代表に
送りました。
「僕を推薦したことを後悔されたくない
から、原稿チェックしてね」と添えて。
ーー 住職はアリヤ代表に
信頼されているんでしょうね。
(中央がアリヤ代表)
住職: 僕みたいなのって、
お気楽そうで頼みやすいのかも
知れません。
まあ僕にしても、アリヤ代表は、
「ダライ・ラマ法王に謁見して
希望の火に祈りを込めてもらう」
というシチュエーションを
実現するために尽力してくれた人です。
僕は、大いに恩義を感じているんですよ。
だから、「何でもやるから言ってね」
という感じでお目にかかっています。
今回も、その延長ですね。
ーー どうやらアリヤ代表と住職は、
お互いお友だち感覚みたいですね。
住職: とは言え、
ダライ・ラマ事務所は、
チベット法王庁の大使館のようなもの
です。
そして、大使は一国を代表する人です。
だから僕はアリヤ代表を、
あたかもチベット国そのものとして、
丁重に接しているところもあるんです。
ーー お友だち的な気持ちと、
チベット国そのものとして丁重に
接するという、両面があるんですね。
住職: 今年3回目のインドも、
何だか『走れメロス』的です。
降って湧いたような大役ですけど、
「もうこうなったら、身を捨てて、
ユーモアで乗り切るしかない!」という感じですね。
ーーー ははは。
やっぱり、ほのぼのですね。
インタビュー後記
住職がインド巡礼を終えて帰国してから、
5月にはまたインドに行かれ、
さらに12月に(今月!)には、
世界各地から僧侶2000人が集まる
ブッダガヤでスピーチをするという、
その大きな展開には驚きました。
住職が、チベットのために署名活動を
されていたことを聞いたことがあります。
「チベット問題」は、中国への忖度から、
自分に火の粉がかからないように避ける
人が多い中で、住職の誠実な態度は
一貫している、と感じていました。
そういう住職の温かく律儀なところが、
ダライ・ラマ法王東京事務所のアリヤ代表の
琴線にふれたのではないか、、
と想像しています。
そしてこれは、「住職がチベットを
応援し、アリヤ代表が希望の火を
応援する」という、友情物語では
ないか、と思いました。
来年、またインタビューで
住職のお話を聞くのが楽しみです!!
<追記>
9月にチベットのTVニュースで、住職と「希望の火」が紹介された映像は、こちら→
(7:29ぐらいから)