住職に聴く! アースキャラバン篇(10)

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。

喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。 http://endo-ryokyu.com/blog/


へブロン(パレスチナの街)への車窓から

 

第十回

 

--住職はつい先日、ヨーロッパ・中東から帰国されたばかりですが、お話をうかがうのを楽しみにしていました。

住職:あっ、どーも。^ ^)/

--住職のブログなどから、ウィーンからパレスチナまで行かれていることは読ませていただいていましたが、ウィーンやテルアビブでは、念仏ワークショップもされたのですね。やはり、今回の旅の目的は来年のアースキャラバンの準備ということもあったのですか?
http://endo-ryokyu.com/past_blog/?p=10662

 

住職:前からヨーロッパの生徒さんたちには、ワークショップをやって欲しいと言われていたんです。でも、アースキャラバン2015の準備で、僕は全然時間が取れなかったんです。

--でしょうね。

住職:この夏に、アースキャラバンで中東にいたときです。
中東和平活動家であるニッキーさんが、パレスチナの独立記念日の11月15日頃に、再び中東に行くと言われたんです。
それなら僕もヨーロッパ経由で中東に行き、来年のアースキャラバンの準備をしようかな、と。

--11月15日は、パレスチナの独立記念日なんですか?

住職:もちろん今のパレスチナはイスラエルの占領下にありますから、これは国連決議によるものだとは思いますけど。

--ヨーロッパや中東での念仏ワークショップなんて、一体どういう感じなんでしょうか? 日本人の私には想像もつかないんですが。

住職:念仏なんて聞けば、古くさく抹香臭いイメージしかないですものね。僕だって、内容を全然知らなければ、「げっ!?ねんぶつぅ、だとう!?」とひっくり返ったと思います。

--ははは! 内容を説明して頂けますか?

住職:口で言うのはすっごく難しいし、誤解を招きそうなんですけどね。「気の幸福力」(法蔵館)で多少説明していますが、例えば、仰向けに寝ている人に対して、、、ああ、もうダメだぁ!
口で説明したら、とても陳腐で怪しげなものになってしまいます、、、。

--日本でもされているんですか?

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ウィーンの念仏ワークショップ

 

住職:今回は、東京、ウィーン、テルアビブという順番でやりました。

--場所によって、違いはあるんでしょうね。

住職:東京でやった時は、初めて参加する人たち相手にわかって頂こうとして、かなり必死でやったんです。でも、思ったほどの手応えが感じられず、ちょっとしょんぼりしてしまいました。

--そうですか、、、。

住職:ウィーンでやったら、それが一転して、すかーっとみんなわかったんです。皆さん、幸福になる道、物差しを自分自身で確立することができる、ということを理解できた。さらに、悟りとはどのようなものであるかを如実に体感できたんです。

--そんなことが可能なんですか?

住職:はい。これが世紀の大発見!(笑) でも言葉に出せば陳腐なんで、これ以上の説明できませんけどね、、、。

--テルアビブではどうだったんですか?

住職:僕は湾岸戦争の頃から、9回ほど、毎年に亘ってテルアビブでタオ指圧のワークショップをしていたんです。それで去年から再開したんですが、中東のワークショップは、反発や疑いの眼差しばかり向けられて、悪夢のように大変だ、というイメージを持っていたんですね。

--そうだったんですか。

住職:ところが今回のワークショップは、参加者にまったく反発も疑いもなく、すっきりとみんなわかったんですね。それどころか、参加者のほとんどから、これからも修行を続けたい、という声が上がって、これまでとは逆の意味で、「げっ!?」となりました。

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イスラエルでのワークショップ

 

--ははは。

住職:というわけで、ヨーロッパも中東も東京よりはよほどやり易かったですね。

--東京は精神的に遅れているんでしょうか?

住職:ヨーロッパや中東の人にとっては、指圧も念仏も異文化です。
だから参加するというだけでハードルが高いのです。そしてワークショップは、その高い敷居をまたいで来た人たちが参加した、ということなのかも知れません。

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イスラエルの生徒さんたちと

 

--はい。

住職:日本人にとって念仏も指圧も古くからあるものです。そのせいか言葉自体に、すでに手垢にまみれたイメージがありますよね。
日本では、さらにオウム事件などもあって、修行という言葉に対して、無意識に拒否する肌感覚もあるような気もします。

--残念な気もしますが。

住職:いやー、でも人間は、ただ働いて食べて世の中に適合しているだけでは、虚しく人生を終えるだけです。多くの日本人はその虚しさに気づかないように生きていますけど、いずれは目覚める人たちが出て来ると思いますよ。

--ただ、気づいてもその受け皿がないですものね。あるいは、“精神修行の場”という受け皿のフリをしたカルトにつかまってしまう。

住職:カルトにつかまらないようにするには、霊的な嗅覚を持っていることが必要です。さらに、「誰かどこかに、神のような特別な人がいる」という幻想を否定する、仏教的知識や智慧も必要ですね。

--どんな知識や智慧なんですか?

住職:仏教が説くのは諸法無我です。だから、「独立した個という存在はない」という哲学が基本です。独立した個がなければ、神の如き特別な教祖などいるはずもありません。

--なぜ教祖主義に陥る人が多いのでしょう?

住職:人は、自分に何かを教えてくれる人に対して、子供の頃に抱いていた父親像や母親像を投影するのですね。

--なるほど。

住職:子供の頃の父親イメージ・母親イメージは、まるで神さまのように絶対的ですからね。悪い人は、それを利用して教祖ヅラして、人を支配、コントロールします。だから、「自分は神のような特別な存在だ」とする人や、「自分は悟った」とする人などに対しては、すぐに警戒アラームを鳴らした方が良いと思います。

--それでもカルトに取り込まれる人は、後を断たないですね。

住職:それはやっぱり恋愛詐欺に引っかかるみたいなものですからね。

--うーん、、、、。ところでパレスチナの話に戻りますが、来年のアースキャラバン中東について、現地でミーティングされたように伺っていますが、、、、。

住職:新たに中東担当のマガリ(イスラエル人)、オマール(パレスチナ人)などとのミーティングの結果、数え上げたら切りがないぐらい盛りだくさんの内容になりました。とりあえずベツレヘムについてだけお話しします。

--ベツレヘムというと、イエス・キリストが生まれたと言われているところですね。

住職:はい、ここの街を上げてのフェスティバルに、アースキャラバンがさらに大きく関与することになりまして、、、。

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ベツレヘム・フェス実行委員会メンバーと

 

--具体的には、どんな形ですか?

住職:ベツレヘムの彼らは、キリスト教徒なんですが、超日本文化ファンなんですよ。それで、ぜひ大きな日本コーナーを設けたい、と。そして、かっぱ巻などの寿司やお茶、着物コーナーやサムライ・グッズや太鼓、日本の古典芸能なんかをぜひ紹介して欲しい、と。

--へぇー!

住職:8月6日の広島原爆の日には、日本大使やいろんな国の大使を呼び、異宗教合同で慰霊祭をやろう! とベツレヘムフェス実行委員会とのミーティングは、超大盛り上がりでした。

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エルサレムで

 

インタビュー後記

ぜひ、このブログを読んでほしい、、と思います。
http://endo-ryokyu.com/past_blog/?p=10654

住職の人柄の自由さの秘密を、垣間見ることができるのではないかと思います。

「考えてみたら、そりゃそうだよな。世間からはずれ、他のことはどうでも良い。
神ほとけの道に進もう、なんていうのは、どこか壊れていないとできないもんね。」

住職と接する中で感じる自由さは、この中から生まれるんですねー。

住職から受ける肯定感は、半端なものではありません。

「いいんだよ、君は君らしくそのままであればいいんだよ」という虫歯になりそうな砂糖菓子みたいな甘さがまったくないのです。

容赦のない本物の肯定感。

だからこそ、接する人は自由を感じるし、正直になれるのだと思います。

深刻な心の破綻の中にいる、という住職。

いつか、そういう話も聞いてみたいです。