住職に聴く! 2018年 春号 

和田寺の住職は、タオ指圧/気心道の創始者、音楽家など、様々な顔を持つ遠藤喨及(りょうきゅう)さんです。

喨及さんにインタビューして、さまざまな質問に答えてもらいます。
一体どんな言葉が返ってくるのでしょうか・・?

遠藤 喨及
東京に生まれ、少年期をニューヨークで過ごす。浄土宗和田寺住職、タオ指圧/気心道創始者、ミュージシャン、平和活動家、ゲーム発明家など、さまざまな顔を持つ、タオサンガ・インターナショナル代表。 1990年頃より、北米各地、ヨーロッパ各地、中東、オセアニアなどの世界各地で、タオ指圧、気心道、また念仏ワークショップ等を行い始める。 また、それらの足跡によって、世界各地のタオサンガが生まれ、現在、各センターは、仏教の修行道場、タオ指圧*気心道などの各教室、海外援助を行っている。 遠藤喨及個人ブログページもご覧ください。
http://endo-ryokyu.com/blog/


住職に聴く! いよいよアースキャラバン2018がスタート!

 

ーー 今年4年目を迎えるアースキャラバンは、国内外ともに、さらに

広がりをもった展開になりそうな予感がします。

すでに決まっていることなどがあれば、伺ってよいでしょうか?

 

 住職: ヨーロッパのメンバーは、サラエボなど最近まで戦地だった街

を巡るピースサイクリングを計画しているようです。

 

ーー それはすごいですね!

ピースサイクリングというのは「平和の火」(原爆の残り火)を持って

自転車で街から街へと走るのですね。

昨年長崎の新聞に掲載されたピースサイクリングの記事

 

住職: 日本では2つの被爆都市である、

長崎から広島までを走るのが、今年最初のピースサイクリングですが、

この区間がまずは面白いことになりそうです。

 

 ーー どんなことですか?

 

住職: まず、世界に“現代のガンジー”と呼ばれている、

非暴力抵抗運動の平和活動家で友人のサミー・アワド氏が

一緒に走ることになっているんです。

 

ーー へぇー、サミーさんって、どんな人なんですか?

 

住職: キリスト教系の人権擁護団体、ホリーランド・トラストの代表です。

イスラエル・パレスチナの平和活動家でサミーを知らない人はいない、

というぐらい、平和活動家として広く知られています。

 

ーー そうなんですか!

 

住職: サミーは、アメリカ留学が長かったようです。

ワシントン大学で国際関係学修士、シカゴ工科大学で博士号を取得し、

世界各地で講演しています。

サミー氏

 

ーー どのように知り合ったのですか?

 

住職: アースキャラバン中東を実現させるために2014年、

イスラエルがガザ空爆中のパレスチナに入り、

ひたすらウロウロしていた時に紹介されたのがきっかけです。

 

 ーー ウロウロって、どんなことをされていたんですか?

 

 住職: 中東の平和活動家の間を渡り歩いていたんです。

ガザ空爆の反対デモとか、パレスチナ人家屋の破壊に反対する

イスラエル人・パレスチナ人の合同デモとか、、、。

 

 ーー 住職が直接行ってウロウロしたということですか? 

そこまで、、、。

 

住職: 人に頼めることじゃないですからね。それで、デモ参加者に

話しかけて回っていたんです。

“誰か、アースキャラバン中東を一緒にやる人いない?”って。

 

ーー えー、、すごいですね、住職!

 

 住職: そうですかぁ、、、? ま、とにかくそうこうする内に、

ベツレヘム大学のマージン教授に出会えました。

そして、“ベツレヘムで毎年大きなフェスティバルを主催している人がいるから

会ってみたら?”と、サミーを紹介されたのです。

ベツレヘム大学 マージン教授

※その頃のことを書いたブログ:

http://endo-ryokyu.com/past_blog/?p=10216

 

 ーー その出会いの結果、今では毎年アースキャラバンは、街を上げてのお祭り

である、ベツレヘム・フェスティバルで活動しているんですね!

 

you-tube映像リンク

https://www.youtube.com/watch?v=-mNfKFb8ptw&t=31s

 

住職: アースキャラバン中はお互い忙しいので、

サミーとは、これまでロクに話したことがなかったんです。

でも、仏式結婚をベツレヘムのホリーランドトラストでやった時、

彼に付き添い人を頼んだことがありまして、、、。

白い服を着ているのがサミー氏

 

ーー えっ!? イエスの生まれた街ベツレヘムのキリスト教系団体の

施設で仏式結婚ですか? 

何とも不思議ですねー! しかも、付き添い人を。

 

住職: 僕は基本、なんでも面白きゃアリだし、

サミーにメールで聞いてみたらノッて来たんですよ。

それで男性の付き添い人はパレスチナ人のサミーに、

女性の付き添い人はイスラエル人のMさんに頼みました。

 

 ーー なんとまあ!

 

住職: イスラエル人がベツレヘムに行くことは法律違反で、

バレると約50万円の罰金なんですが、さすがはサンガメンバー。

ひるむことなく来てくれましたよ。ははは!

 

ーー イスラエル人がベツレヘムに行くことは禁止なんですか?

 

 住職: イスラエル人とパレスチナ人が仲良くなったら、

イスラエル政府は困りますからね。

 

ーー どうしてですか?

 

住職: これまで政府やマスコミがイスラエル国民に植えつけてきた、

「パレスチナ人はテロリスト」というイメージはフェイクであることが、

バレてしまいますからね。

 

 ーー ああ、そうなんですね。

でもそういうイメージは、イスラエル国民だけでなく、

世界中の人々に植えつけられているような気がしますけど、、、。

 

住職: イスラエルは世界のメディアにまで影響力を持っているんですよ。

なにせ新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、映画など、欧米の主要メディアは、

ほぼ全てがシオニスト資本ですからね。

 

ーー そうだったんですか、、、。

 

住職: イスラエル協賛企業には、メディア系以外にもスターバックス、

マイクロソフト、ネスレ、コカコーラ、マクドナルド、ディズニーなど、

それこそ無数にあります。

それこそ、「事実は小説より奇なり」です。

アメリカが年間でなく、毎日250億円ずつ税金から

イスラエルの軍事費を支援しているのも、奇怪な話ですけど。

 

ーー 驚きで言葉もないですね。

、、、それにしても仏式結婚にパレスチナ人とイスラエル人が付き添い

人を勤めて、共に念佛を唱えるなんて、

平和の象徴みたいだし、何ともドラマチックな話ですねー。

 

 住職: その時の打ち合わせで「初めて」と言っていいぐらい、

サミーとゆっくり話したんです。

僕がちょっとジョークかますと、すぐノッてくるし、

面白い奴だなあ、と思いました。

“自分は仏教LOVER(仏教を愛している人間)だ、とも言っていたんで、

その後、一緒にサンガの音楽念仏やったら、すっかり気に入ってました。

 

※音楽念佛:和田寺タオサンガ道場では、
三重奏のハーモニーで音楽的かつ瞑想的な念佛を唱えている。

 

ーー とても素敵な話ですね!

 

住職: その時、いつか日本にも行きたい、と言う話が出て、

ならば長崎から広島まで一緒に自転車で走って、

各地でトークをしてもらおう、ということになったのです。

 

 ーー うは~。話がめくるめく展開して! 

ところで、どのような街を通るのですか?

 

住職: まず、長崎で出発式をしてから港に向かい、

フェリーで熊本に渡ってキリスト教会でイベントを行います。

 

ーー 長崎の出発式では、どんなことをされるのですか?

 

住職: アースキャラバン長崎実行委員長の尽力で、諏訪神社という長崎の

ランドマーク的なところで出発式が行えることになりまして、、、。

サミーのトークやアミナダブ※のライブ音楽、

またクリス・モズデルの詩の朗読等々をやろうか、と。

 

アミナダブ※:住職のバンド

http://aminadabu.com/

 

ーー クリス・モズデルさんというのは?

 

 住職: マイケル・ジャクソンやクラプトンの歌詞を書いて来た詩人で、

アースキャラバンのテーマ詩である「金色(こんじき)の華の炎」を書い

た人です。

 

ーー すごい!! 日本に来られるんですか?

 

住職: 彼は東京に住んでいますからね。よう喋る奴だけど、

僕にとってはあまり気を使わなくて済む、オモロイ人間の一人です。

だから彼にも、一緒に走らないか、と誘ったら、おお何だか面白そう!

と来ることになりまして、、、。

 

ーー いや~、なんだかアースキャラバンってユニークですね。

住職の友だちの話をもっと聞いてみたいですが、また機会をあらためて、、。

それで、長崎からどのように移動するのですか?

 

住職: 翌日フェリーで熊本に渡り、キリスト教会でイベントをすること

になりました。

 

ーー 神社の翌日はキリスト教会ですか? どうやって、そこと、、?

 

住職: 現在、パレスチナのキリスト教徒は、イスラエル占領下にあって

筆舌に尽くしがたい苦しみの中に生きています。

 

ーー パレスチナにキリスト教徒がいるんですね。

知りませんでした。

私のイメージでは、パレスチナ人=イスラム教徒でしたから、、。

 

住職: 彼らは主に、ベツレヘムを中心に住んでいます。

 

ーー そうなんですか。

 

住職: イスラエルのパレスチナ占領による彼らの苦しみについては、

「カイロス文書」という、エルサレムの全てのキリスト教会の司祭が

サインした冊子にまとめられています。

 ※カイロス文書リンク http://www.kairospalestine.ps/sites/default/files/Japanese.pdf

 

ーー 日本のキリスト教徒は、ほぼそんな事実を知りませんよね。

 

住職: 西欧もそうですよ。また、仮に話を聞いたとしても、

エルサレムやベツレヘム現地のキリスト教徒たちの

苦しみに寄り添おうという人は少ないらしいんです。

 

ーー 驚きですね。

 

住職: 昨年末、アースキャラバンのことで広島の教会を回っていたんです。

その時、“熊本から来た牧師から、現地ベツレヘムについての講演を

聞いたことがある”という情報を得たんです。

 

ーー 熊本の牧師さん、ですか。

 

住職: それでネットで探して連絡を取ってみたんです。

そうしたら、カイロス文書を書いたベツレヘムの牧師さんとも交流があり、

音楽教育の支援をされて来た立野牧師という方でした。

 

ーー そのような方が熊本にいらしたんですね!

その牧師さんのいる教会でイベントが開催されるのですね。

 

住職: はい。

 

ーー それは、日本のキリスト教関係者にとってもすばらしいイベント

になりそうですね。

 

 住職: 熊本のあとは、福岡県の星野村に向かい、

そこでもアースキャラバン・イベントが行われます。

 

ーー 原爆の残り火である「平和の火」を守って来た村ですね。

どのような経緯でそうなったのですか?

 

住職: 昨年、星野村でイベントをされた、“やっこちゃん”と言う人を

紹介されて会ったところ、意気投合しまして、、、。

 

ーー で、イベントをすることになったんですね。

 

 住職: はい。その後、別府まで行って一日休み、再びフェリーを使っ

て四国に渡り、松山に行くことを計画しています。

 

ーー すごいスケジュールですね。まさにキャラバン、、。

 

住職: 松山の高校に、とても理解のある先生がいらしたので、そこの

高校生たちにアースキャラバンに触れてもらいたい、と現在企画中です。

今年できるかはまだ未定ですが。

 

ーー それは楽しみです。 松山のあとは?

 

住職: 当初の目論見では、今治から「しまなみ海道」を通って

尾道に行こうと思っていました。

 

ーー 「しまなみ海道」と言えば、世界的にサイクリングで有名なコース

ですね。尾道でも何かされるおつもりだったんですか?

 

住職: 尾道の妙泉寺という日蓮宗寺院の副住職とは浅からぬご縁を頂い

ていまして、そこで、ピースキャンドル・ナイト奉納イベントはどうかな、と。

 

ーー わー、すてきですね! 今年の夏もすごいことになりそうですね。

それにしてもハードな日程ですね。

 

住職: 実は、2月初旬に長崎、熊本、福岡、別府、松山、とそのコース

を辿りながら各地でミーティングしたり動いていたりしたんです。

その時、とても尾道までは行けず、“これはスケジュールがタイト過ぎるな”、

と気づきまして、、、。

 

 ーー (笑) ですよね、、。

 

住職: それで、松山の後は広島まで自転車をフェリーで運ぶ、

ということになりそうです。

 

ーー 自転車以外の人も行かれるんですか?

 

 住職: 自動車で行く人や、それに便乗して乗る人や、みんなで適当に

自転車を交代しながらとかだから、色々ですね。

だって僕ら、別に「サイクリスト!」というワケではないし、

歯を喰いしばって走りながら「平和!」と叫ぶワケでもないしね。

 

ーーふふふ。

 

住職: イギリス人、パレスチナ人、アメリカ人、日本人が適当にチンタラ

走る、マジカル・ミステリー・ツアー(ビートルズのアルバム名)という

感じですかね。

 

 ーー お話を聞いていると、何だかとても楽しそうな空気が漂って来て、

私まで参加したくなります。

 

住職: 誰でも参加できますよ。ただし、参加条件がありますが。

 

ーー 英語が話せること、とかですか?

 

 住職:  いえいえ、うるさいこと言わない人であることです。

“そんなことしたら危ないじゃないか!何かあったらどうするんだ!?”

みたいなことを言わない人。

なんせ、こっちは中高生のノリでやっているんだからさ。(笑)

 

ーー 学級委員やPTAにいられたら、堅苦しくなって楽しめない、ということなんですね。

 

住職:  “オレ、サイクリストだぞ”、みたいな、

どことなくエラソーな人も苦手ですね。

ほのかに上から目線でブイブイ言わせていたり、とか、、、(笑)

 

ーー (笑)あっ、どっちも大丈夫です!

左からホリーランドトラストのエリアス、ララ、右が2015年、
社民党から立候補した増山麗奈さん

 

インタビュー後記

住職の話をうかがっていると、友達が多いんだなーといつも感じます。

誰とでも友達になってしまうということなのかもしれません。

でも、だれとでも友だちになれるって、そんな簡単なことじゃないです。

アースキャラバンという、地球の明るい未来を創るムーブメントは、

住職の呼びかけで始まった。

日本だけじゃなく、北アメリカやヨーロッパでも活動があり、中東もある。

それで「平和の火」(原爆の残り火)をエルサレムまで運ぶことができた。

ただ”平和イベントをしていますよ”、というだけだったら、

私もすぐに「理解」できたことでしょう。

だけどアースキャラバンは、ピースサイクリング、海外支援、異宗教融合など、

内容があまりにも多岐に亘っていて、なかなか頭の理解が追いつきません。(笑)

話を聞いていても、ひたすら驚きの連続です。

最後のところは、思わず吹きましたけど。(笑)