直感が告げたものは
「タオ指圧は不眠症に効きますか?」と、問い合わせた上で予約した方
がいた。
ところが私自身が、その日の夜は、どうも寝付けなかった。そして、朝に
なっても疲れが取れない。
その翌日、彼女は、治療を受けに来た。
最初の問診の時、実をいうと私は、「何か別の“何者か”」が、一緒にいる
ような気がしてならなかった。
しかし私は、“いやー、気のせいだろう。昼に変なものを食べたか
な?”と、常識にしたがって、自分の直感を打ち消した。
とにかく施術を始めた。
施術が進むにつれて、やがてはっきりと、この患者の頭部と両足に、
強い”邪気の塊”を感じた。
それまでは、常識で自分の直感を打ち消していた私も、その時になっ
て、“この邪気のかたまりのようなものは、亡くなった救われていない魂”
なのだ、と思うに至ったのだった。
そこで施術しながら、“仏さま(阿弥陀如来)の大いなる愛が、この魂に
届くように”と祈った。心の中で念仏を唱えながら、施術を続けたのである。
私は、懸命に施術した。ところが、なぜか、この女性のツボや経絡は、
私の気が浸透しないように逃げようとする。私の圧が、逃げられたり、
かわされたりするのだ。
それは、深部に存在する邪気への治療を、まるで何者かが邪魔している
かのようであった。
それを乗り越えつつ、深部に圧を到達させていく施術は、大変な作業で
あった。
同時にそれは、彼女にとっても、かなりつらく苦しい治療であったようだ。
ひたすら祈りながら
やがて施術も終わりに近づいた。
そして、座位になってもらったときだ。
突然、彼女は、正面を凝視し、絶句し、顔面蒼白になった。
実は、その時、現れたのである。
これまで長年に亘って、毎晩、彼女の夢に出てきた人たちの姿。
夜な夜な彼女を苦しめ続けた、その顔たちが、目の前にあったのだ。
その時、私は、正面に回り、彼女の目を見て言った。
「大丈夫ですよ。もう二度と彼らが現れることはないですよ。」
彼女は驚いたように、私を見て言った。
「あなたにも見えるんですか?」
私は答えた。
「いいえ、感じるだけです。しかし、やっと彼らも、自由になれたようです。」
彼女は驚愕したようだった。というのは、自分が長年、悪夢に悩まされて
来たことは、何一つ私に話していなかったからだ。ましてや、彼女が悪夢
で見ていた、“何者か”の存在たちのことなどは、、、。
しかし、私はそれを、なぜか感じてしまったのだ。そして心の中で念仏を
お唱えし、仏さまの光明が、彼らのたましいをお救い下さるようにと、
ひたすら祈りながら施術していた。
やがて最後には、私自身も、平和な安堵感に満たされた。だから「やっと
彼らも、自由になれたようです」と、彼女に伝えることができたのだ。
タオ指圧は身/気/霊、一体の治療
治療後、彼女はほっとしてはいたが、突然、自分の身に起こったことの
意味がわからず、半信半疑のようであった。
それでも、帰宅するころには、かなり明るい気持になっているようだった。
3週間後、Eメールが来た。
「精神科にも行きました。睡眠療法の専門家にもかかりました。
また、針治療にもカイロプラクティックにもかかりました。
およそセラピーと称する、ありとあらゆるものにかかりました。
しかし、毎晩、悪夢にうなされる私の助けには、なりませんでした。
25年にわたって、毎夜のごとく苦しめ続けられた悪夢でした。
それが、ただの1回のあなたの治療で、消えてしまったのです。
おかげさまで、今は、目覚めもよく、なんとも重い荷物を降ろしたようで、
気持ちも軽くなりました。
そして毎日を、ウキウキとした気持で暮らしています。
本当に 、なんと、すばらしいことでしょう・・・・。」
私は、阿弥陀如来と念仏に感謝した。
そしてタオ指圧が、身/気/霊、一体の治療であり、仏の道と共に
あることの持つ深い意味を、あらためて認識したのだった。
記/ アレックス・ペレクリタ(カナダ トロント)