妊娠がわかった
家を出たい
Rさんが私のもとに訪ねてきたのは、
今から3年程前のことになります。
当時の彼女は30歳、165cm37キロと
、ずいぶんやせていました。
顔には吹き出物が多く目につき、何か辛そう
な印象を受けました。
話しを聞いてみると、彼女はかなりのストレ
スの下で日々過ごしていることが分かりまし
た。
というのは、彼女の実家は自営業で、父親、
兄、妹と、揃って同じ職場でした。
そのため仕事場でも家庭でもなかなか緊張の
ほぐれる時がなかったのです。
特に父親の強い圧力のもと、息苦しさを感じ
ていました。
彼女は、いつか家を出たいと願うようになっ
ていたのでした。
そんな願いがあり、また、結婚を希望する
男性もいたのですが、どうしても家族との絆
を断てずにいました。
仕事に対する責任も感じていたため、
なかなか踏み出せずにいたようです。
思いが 変化を生んだ
また、彼女には子供が欲しいという願いもあ
りました。
ですが、自分には妊娠するのは難しいのでは
ないか、自分には産めないのではないかとい
う不安もあったようです。
“とにかく今の自分の状態を知り、それを改善
したい、良くなってから子供を産みたい”とい
う思いを強くもっていました。
そんな気持ちで、彼女はそれまで通っていた
ハリの先生の紹介で、私の所へ訪ねてきたの
でした。
私は、彼女を励ましながら、はじめの頃は週
に2回、様子を見ながら徐々に週に1度のペ
ースにして、指圧をしていきました。
そうしているうちに、彼女の体調は良くなっ
ていき、やがて結婚をしました。
無口だった父親も、彼女の変化につれて少し
ずつ話しをするようになり、関係が改善され
た、と聞きました。
新しい生命を宿してから
そんなある日、私はいつものように指圧をし
ていると、彼女のお腹がいつもとは違うこと
に気づいたのです。
妊娠している! 彼女に、
「もうここに誰かいるわ!」と伝えました。
彼女はびっくりしていました。
彼女自身、その事実をまだ知らなかったの
です。
そしてなんとその15日後に、妊娠の事実が
明らかになったのでした。
彼女は妊娠中も通って来ました。
出産後、体調はいよいよ良くなり、
体重も増え、精神的にも、穏やかに、
そして強くなっていったのです。
現在でも、たまにやって来ます。
生後間もない赤ちゃんを抱いて、
幸せそうな彼女を見ていると、
心からうれしく、この仕事の喜びを感じるの
です。
彼女は、出会えたことを本当に喜んでくれ、
単に治療のためだけではなく、良い人生を送
りたいために、私のところへ来ているのだと
話してくれました。
記/ Loredana Bazzi (イタリア)